中の人など……ちぇんじ！｜リアクション

中の人など……ちぇんじ！

●騙し合い

　エレノア・エインズワースは骨削瓢を探していた。
　外見の瓢ではなく、中身の瓢を。
（派手な行動と特徴的な口調から判断できるでしょう）
　そして彼女は、見つけた。
「はあ、ふう、危なく見つかるとこだったよぃ」
　息を切らせながら。カメラを手に廊下の角に隠れている伊賀解理……の姿をした瓢に、男口調で声をかける。
「あんたも一年だよな？　俺は猫鳴館住まいなんだが。こいつに入れ替わって困ってる。知ってたらこの体の持ち主のことを色々教えてくれ！　放課後まで誤魔化しきれそうにない」
「エレノアをどう思っているか」を聞き出しつつ「本当は入れ替わってない」事実を隠しきれるかという悪戯をしかける。
　それがエレノアの企みだった。
　瓢はエレノアの顔をまじまじと見る。
（普通、入れ替わった本人を探すなり、近くのクラスメイトに聞くなりすればいい話さねぇ。
　入れ替わったフリしてる様だね……あっしを嵌めるとは小癪な）
「奴さんの事ねぇ、オツムが切れ良い趣味をお持ちで気が合いそうだ、一緒に悪巧みしたら面白いだろうよ」
　そこまでは本音を言いつつ、言葉を切りエレノアを見つめる。
「もっと言うなら美人だし結構タイプなんだよぅ？　お付き合いしてみたいもんだねぇ」
（エレノアはんに気は無いが、ドギマギさせちゃる）
　エレノアは一瞬絶句した後、面白そうに笑う。
「ふふふ……さすがです、本音など言う方ではありませんでしたね」
「わからいでか。まあ、あながちウソでもないんだがねぇ」

「見つけた！」
　そこへ、伊賀解理が駆け込んできた。
　有無を言わさずタックル、自分の姿の瓢を押し倒す！
　瓢の持つカメラが床に激突し、嫌な音を立てた。
「今までやらかした事を聞かせてもらおう！　というかスパッツは無事か！　えぇい自分の目で確かめてやる！」
　そのままスカートをめくり、真っ赤になる。
「僕のスパッツはどうした！　そのカメラ、まさか……」
「スパッツなら邪魔くさかったんで破っちまったよぃ」
「なにーっ！　なんてことを、許さん！　うう、僕のスパッツ……引きこもってやる……」
　カメラは解理の手によって没収された。
　後でフィルムを抜いて返却されたものの、不運にもカメラは衝撃により壊れ使い物にならなくなっていたという。

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