中の人など……ちぇんじ！｜リアクション

中の人など……ちぇんじ！

●謙虚な忍者と汚いナイト

　島野夏帆と一緒に校門を通った内藤武諭は、なんだか体の調子がおかしい、と感じた。
　自分の身体じゃないような、勝手が違う。
　多分部活で疲れているのだろう、多分。
「ところで夏帆、この前の宝探しのｋ……」
　話しながら目を向けると、目の前に謙虚を体現するかのような偉丈夫がいた。
「というか俺？」
　いや俺の声もおかしい、と思いながら下を見る。
「何故生足？　っていうかスカート？」
「なによ……って、ええええ！！？」
　夏帆も幼馴染のほうを見て、仰天した。
　武諭がいたはずの場所には美少女が、自分の顔をぺたぺた触っていた……
（って冗談よ。自分の顔の平凡さぐらい知ってるわ。……とにかく。落ち着きなさい、落ち着くのよ、私）
「お、お、お、おいィィィィ！！？？」
「武論も落ち着いて」
　混乱中の武諭の頭を軽くはたいて。
　自分が武論にはたかれていることになると気づき、微妙な心境になる夏帆。
「神魂の影響の何かでしょ。どうせすぐ戻るわ」
　普段はハイテンションな元気少女を演じてるけど、武諭の体だったら別に素を出しても平気よね、と思う。
「何故こうなったかはともかくまずはこの状況をどうにかしなければ……」
　深い悲しみに包まれた武諭は言う。
　とはいうものの。
「身体が思うように動かない。動きにくい重い。夏帆、少しばかり鍛錬不足なんじゃないか」
「ああん？　あんた今なんて言った……？　よーく聞こえなかったなぁ、もう一回言ってみ？」
「部活でも始めたらどうだ、エクストリーム帰宅部とか」
「言っておくけどね！　体脂肪率は平均よりはるかに下回ってるのよ！！　ほとんど筋肉よ、筋肉！！」
「それならもっと体の切れがいいはずだ。自己流だけでなく、効果的にトレーニングするなら人の話を聞くべきだ。だいたい……」
　夏帆を気遣っての助言だったはずだが、何やら雲行きが怪しくなってきた。
「武諭こそ、いっつも変な自己主張しちゃってさー。私の身にもなってよね。恥ずかしい」
「何が恥ずかしいんだ。変な主張してるのはむしろお前だろ」
「なんですって！」
　つい頭に血が上った夏帆は自分の体に向かって手をあげようとする。
「おいィィ！？　待て夏帆！　勝手に俺の身体使うな！　っていうかお前の身体殴ろうとすんな！！　危ないだろうが！」
　慌てて止める武諭だったが。
「自分の体だからあまり後に響かないように傷めつけましょ……って逃げんなこら！！」
　武諭は脱兎のごとく逃げ出した。
「俺のパンチで本気出されてたまるか！　お前を殴ったと思われる俺の身にもなってくれ！」