中の人など……ちぇんじ！｜リアクション

中の人など……ちぇんじ！

●いい子ちゃんばかりじゃないさねぇ

「なんか違和感あると思ったら、この身体骨削氏じゃあないか！」
　伊賀解理は、鏡に映った骨削瓢に向かって叫んでいた。
「……待てよ、じゃあ僕の身体は……大変だぁ！」
　今僕が骨削氏になってるのに、骨削氏が僕になってないと言える保証はあるか？　
　いやない！　つまり今僕の身体を彼が使ってるはず！
　瓢の姿をした解理は走り出した。
　（彼は僕の身体を利用して絶対なんかやらかす！　同じ寮にいるからよくわかる！
　その前に止めなければ。もう今僕が骨削氏だって事実は忘れよう！）

　校内を走りながら辺りを見回すが、骨削……ではなかった、自分の姿は見つからない。
「あっ、八神氏。僕を見なかったかい？」
　声をかけられた八神修は、怪訝な顔をした。
「目の前にいるが、どういうことだ」
「いや、僕っていうのは今の僕ではなくて骨削氏な僕であって……いいから１年８組の伊賀解理を見なかったかと聞いている！」
「見ていないな」
「わかった。見つけたら教えてくれ！」
　修が事情を聞く間もなく、瓢の姿の解理は走り去った。
（目撃情報だけで、なんかしたって情報が入らないことを祈ろう。
　もし耳にした情報が恥ずかしい事だったら……ふえぇ、場合によっては引きこもるぞ僕は！）

　その頃、解理の姿になった瓢は。
「こりゃ面白いことになったねぇ」
　独りほくそ笑んでいた。
（あっしの大願を叶える為には力をつけないとねぇ。
　こいつのろっこんを体ごと奪ってあっしの力としちゃる。二つのろっこんを手に入れた今こそカオスを作ってやるわ！）
「しかしこのスパッツ……邪魔くさいわ！」
　びりびりー、と無残にスパッツが破られた。
（あっし自身の性欲は薄いが、悪戯として女の体ならウフフな場面を見ても敵意は向けられん。
　女子更衣室に入り女子の着替え写真を激写してエロい男共に高値で売りさばいてやるわ）
　寝子高のフツウ、ピンチ！

「騒がしいですね」
　エレノア・エインズワースは、登校時の騒ぎから神魂騒動を知った。
（どうも人格入れ替わり現象が起きているようです……ふふふ）
　エレノアは窓に姿を映し、大声を上げた。
「なんだこりゃ！　誰だこいつは？　女になっちまった！」
　エレノアは頭を乱暴に掻いた。
　そして男子トイレに入りかける。
「エレノアちゃんじゃないか？　どうしたんだい？」
　声をかけてきたのは、上穗木千鶴……の姿をした八十八旗信彦だった。
「あんたも入れ替わったの？　俺は3年の佐藤っていうんだけど、この体の奴のこと知ってんなら教えてくんない？」
　エレノアは入れ替わってなどいない。名乗った名前もでまかせである。
　入れ替わった振りをして、自分の事を知る『善人』にエレノアの陰口を言わせる」という計画なのだ。
　素直にその言葉を信じた信彦は言う。
「やあ、君も入れ替わったのかい。その子はエレノア・エインズワースと言って、俺のク……いや、１年２組のレディさ」
「ふーん、あんたもそいつのこと嫌いなの？」
「嫌い？　とんでもない。素敵なレディはみんな大好きさっ」
　本心から言っている様子の信彦に、少したじろぐエレノア。
（相手が悪かったようですね。まあいいです別の楽しみがあります。世の中皮肉です）
　立ち去ろうとするエレノアに信彦は声をかけた。
「レディの体をむやみにさわっちゃいけないよ？　紳士的にねえ」