中の人など……ちぇんじ！｜リアクション

中の人など……ちぇんじ！

●似たもの同士

「ふぁー、朝はやっぱりまだまだ眠いね。……ありゃ？　なんか視界が高くなったような気がするよ」
　高梨彩葉は、視界の高さに気づいた。
「なんか周りが騒がしいし何が、ってうぇぇ！　誰コレ！？」
　自分の顔を窓に映して確認した彩葉は、思わず声を上げた。
「なんか知らない人になってるー！　前髪は似た感じだけど……男性化……じゃないか、髪の色が違うもん」
「ふあ……ねみ。ちょっち夜更かししすぎたさねー……ん？　なんかいきなり視界が低くなったような？」
　霧谷朧も、ちょうど逆の違和感を感じていた。
「にしてもみんな朝っぱらからうっせーし元気さなー……っておい？　窓に映ってるの誰だよ！？　てか女の子になってるとかなして？」
「あ、私はっけーん！」
　声のほうへ振り向けば、自分の姿が。
「あ、俺発見。話し聞くか……」
　少し話して、安心したように彩葉は言う。
「やっぱりただ入れ替わってるだけだったんだねー。私、１－４の高梨彩葉です」
（ラッキーなことにお互いが入れ替わってたようだ。探さずに済んで助かったぜ）
　と朧は思う。
「高梨ちゃんっていうんか。よろしくさね、俺は２年の霧谷朧……なんかこの状態だとこんがらがるな」
「ふむふむ、霧谷朧先輩ですね。なんだか私が別の人の名前を言ってるみたいだ！」
　何しろ自分の顔を前にして自己紹介しているのだから、違和感あることこの上ない。
「てかいつもの調子で喋るとすごい違和感だな、高梨ちゃんが喋ると俺がちゃらい感じになるし」
「ちゃらい？　それならもっとちゃらく喋ってみよう！」
　クスクス笑いながら、彩葉がナンパの真似を始める。
「『へい、お嬢さん一緒にお茶行かない？』　にゃんてねー。ふっふっふ、一回ナンパにでもいってきましょうか」
「ちょい、やめろし。ナンパとか俺のキャラじゃねーし。
　そっちがそうするってんなら俺はこの状態でお菓子くいまくろっと。学食のデザートも食べるか。カロリー気にしないで」
「いやー！　無差別にお菓子食べるのはだめぇぇ！　それ以上体重が増えたら大変なことになっちゃうぅ！！」
　全然太ってないのにな、と朧は彩葉の体に目を落とす。
「冗談に決まってんじゃん。これでおあいこさね。とりあえず屋上にでも行って落ち着こうか」
「ふふ、私も冗談ですよー。そですね、ちょっと落ち着くために屋上にレッツゴー！」
　二人は話しながら屋上へ向かった。

　幸い屋上には見える範囲には誰もいなかった。
「高梨ちゃんももれいびなんか。だったらお互いのろっこん使ってみねぇ？　俺のもちゃんと教えるからさ」
「おおう、朧先輩ももれいびさんだったんですね。んじゃちょっと試しに先輩のろっこんを使わせてもらおう。
　あ、私のはまずバッグからアミぐるみを出してくださいね」
「へーアミグルミか、これをどうするんだ？」
「ショータイム！　って叫ぶんです。動きをイメージしながら」　
　言われた通りにすると、クマのアミぐるみが可愛らしく動き出した。
「可愛い能力じゃん♪　俺のは、目を手で覆って『もういいよ』って言うんだ。すると透明になれる」
「かくれんぼみたいですね」
　さっそく試してみる彩葉。
　一瞬で体が服ごと透明になった。
「おー！　凄い本当に透明人間になっちゃったー！　何これ凄く楽しいー！」
　彩葉の声が微妙に揺れる。透明のまま反復横とびをしているのだ。
「俺のも楽しいっしょ？」
「コレも中々楽しいけど、早くもとに戻れたらいいなぁ」