新年度、九夜山ピクニック☆｜リアクション

新年度、九夜山ピクニック☆

〇三夜湖畔へ向かって

　１年普通科の仙藤蒼は、三夜湖畔コースのピクニックに参加しました。
　高校に入ってしばらくが過ぎ、初めての学校行事です。
（まあ、順当なところよね）
「今日はいいお天気だし、山登りするにはいい感じ」
　それに身体を鍛えるのにもいいしね、と思います。
　ゲーム好きの蒼はどちらかといえばインドア派ですが、ゲーマーは意外と体力勝負です。
　長時間集中力を途切れずにプレイするにはどうしたって気力がいるし、その気力も結局体力がなければ長続きしません。
　そんなわけで、ピクニックは適度な運動としてちょうどいいと思ったのでした。

　湖に着くころには適度に汗もかいていました。
「寒っ！」
　湖から吹き付ける風は爽やかを通り越して結構冷たくて、思わず蒼は叫んでしまいました。
　背負ったリュックからフード付きパーカーを取り出して、着ることにしました。
「これで少しはましになったかな？」

「蒼ちゃん、こっちでお弁当食べようよ」
　同級生に誘われ、レジャーシートをお弁当を食べ始めます。
「たくさん歩いた後で食べるお弁当はおいしいよね」
　お弁当を食べ終わった後で、適当に同級生とその辺をうろつくことにしました。
「温かくなってきたね」
　キラキラ輝く湖の水が、気持ちよさそうで。
「脚入れちゃおうか」
「冷たくない？」
「ちょっとだけ」
　蒼は靴下を脱ぎ、そっとつま先を水につけてみました。
「気持ちいい」
「あたしもやってみようかな」
　そのまま蒼は脚を水に入れ、バシャバシャ波を立てます。
「冷たい！　けど気持ちいい！」
　しばらく蒼たちは水遊びを続け、さすがに寒くなって脚を拭きました。

「あっちにアヒルボートがあるよ」
　愛くるしい表情のアヒルボートを見つけて、女子たちははしゃぎました。
「乗ってみよう！」
　蒼は張り切ってアヒルボートに乗り込みました。
「蒼、漕いでくれる？」
「いいわよ。こんなの簡単よ」
　アヒルボートはペダル式で、ハンドルで方向を変えられる簡単なものです。
「うわあ、速い」　
「なんか隣のボートも速いよ？　蒼、負けないで」
　隣を走っているボートには野菜原ユウが乗っていました。
「にししっ、負けないぜ！」
「よーし、そっちがその気なら、フルスピード！」
　なりゆきで競争する羽目になり、蒼のゲーマー魂がうずいて本気でペダルをこぎます。
「くっ、早え！」
　余裕だったユウは歯噛みして悔しがっています。

「やった、勝った！」
　蒼は三夜湖でのピクニックをそれなりに楽しむのでした。

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