新年度、九夜山ピクニック☆｜リアクション

新年度、九夜山ピクニック☆

☆珪先生と一緒に

　綾辻綾花は、早く起きてお弁当を作ってピクニックに向かいました。
（珪先生に会えたら一緒に行動したいです）
　早川珪先生は、２年の時は担任でしたが今は図書委員の時ぐらいしか会えず、綾花は寂しい思いをしていました。
　早めに集合場所についた綾花は、すぐに珪先生の姿を見つけました。
　帽子とリュックという姿ですがやっぱり様になっており、いつもと違っていて新鮮な感じです。
「おはようございます。珪先生、千年杉コースに行きませんか？」
　そっと近づいて声をかけます。
「ああ、僕は千年杉コースだよ。綾辻さんも？」
「はい！　よろしくお願いします」
　満面の笑みで綾花は答えるのでした。　

　そんなわけで、綾花は千年杉コースへ向かい、珪先生の隣を歩いていました。
「『美の泉』があるって聞いたから気になってて。ぜひ肌に付けてみたいです」
「この時期にだけ出現するんだってね。そういえば肌につけると綺麗になれるんだって？」
「綺麗になれるって憧れます。珪先生は付けなくても綺麗ですよね」
「えっ？」
「美形でカッコいいですから。羨ましいです」
　つい見惚れちゃいそうです、という言葉は心の中にとどめておきましたが。
「綾辻さんこそつけなくても綺麗でしょう」
「えっ？　そんな……」
　珪先生に片思い中だから綺麗と言われたい、そんな気持ちが伝わったような先生の言葉に、綾花はドキッとしました。
「高校生だもの、肌はつるつるだよね。僕はかなわないよ」
　そんな珪先生の言葉に、
（そういう意味ですか）
　ちょっと残念な気もしつつ、綺麗と言われたのはやっぱり嬉しくて、ほんのりと頬を赤らめるのでした。

　美の泉に着くと、綾花は持ってきた猫型のメモ帳を水に浸けてみました。
「虹色のメモが出来上がりです」
「本当だ、綺麗だね」
「ええ、可愛いですね」
　虹色に染まったメモを手に、綾花は微笑みます。
「このメモ使って栞作ろうかな。出来たら珪先生にも渡しますね」
「ありがとう。楽しみにしてるよ」

　それから綾花は泉の水を肌につけながら、泉の奥を覗き込みました。
「もしかして人面魚を探してるの？」
「ええ、伝説の人面魚、見てみたいですね。綺麗な魚なんですよね」
　しかし水面は静かで、そんな生き物が現れる気配はありませんでした。
「さっきのメモが猫の形だったから、怖がって隠れてしまったのかもしれないね」
「そうかも。食べられちゃうと思ったんでしょうか」
　そんな話をしたらお腹がすいてきて、時計を見るともうお昼でした。
「珪先生、お昼の時間ですね。一緒にお弁当を食べましょう。おかずの交換しませんか？」
　珪先生は頷くと周囲を見回しました。
「あそこで食べようか。見晴らしがよさそうだ」
　珪先生は他の生徒たちにも目配りし、困っている生徒はいないか見ているようでした。
　幸い問題は起きておらず、綾花は珪先生と楽しくお喋りしながら過ごすことができたのでした。
　

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