ことのはあそび　～新た夜～｜リアクション

ことのはあそび　～新た夜～

●春の花の花言葉

　木天蓼大学文学部心理学科２年生の仙藤紫は、心理学の研究者かカウンセラーを目指している。
　専攻分野は固まってきている。
　大学院進学になるかもしれないので、ゼミや教授の情報収集をする必要がある。
「どうしようかしら……」
　目指すものは決まったが、それらの過程をどうすべきか迷ってしまう。
「考えすぎて、頭が痛くなってきたわ」
　疲れたので、気分転換に散歩をすることにした。
　今日は天気が良い。暖かいので出かけるのには丁度良い。

　自宅を出てしばらく歩くと、近くの公園にたどり着いた。
　桜の花が満開なので、もう春なのねと季節を実感する。
　何やら賑やかだったので様子を窺うと、公園の一角でフリーマーケットが開催されていた。
　興味を示したので、そこに行って、何があるのかを見ることにした。
　販売されているのは古書や古着、食器類の類が多かったが、手作りの品もいくつかあった。
　その中で紫の目についたのは、和紙で作られ、様々な色のリボンがついている押し花の栞だった。
「いろいろな種類の花があるのね」
　春ということもあり、春の花の栞が多かった。
　桜、色とりどりのチューリップ、菜の花と種類は豊富だ。
　大学生になってから、心理学に関する書籍や専門書をよく読むようになった。
　それに挟む栞を買おうと思い立ったので、何かひとつ買うことに。
「桜もいいけど、チューリップもいいわね」
　どれにしようか迷ったが、選んだのは可愛い雰囲気のピンクのチューリップの花びらの栞。
　自分の分だけでなく、妹の分も買った。妹の栞は菜の花の押し花だ。

「いい気分転換になったわ」
　自宅に戻ると、最近買った心理学者の書籍を読む。
　少し読んでいると、妹がご飯だよと紫を呼ぶので、フリーマーケットで買った栞を挟む。
「ピンクのチューリップの花言葉は何かしら」
　気になったので調べてみた。
　花言葉は「愛の芽生え」「誠実な愛」。
　チューリップ全般の花言葉は「思いやり」だった。
　心理学者になるにしろ、カウンセラーになるにしろ、相手に寄り添い、思いやって接することになる。
　こころの専門職に係わりたいと思う自分らしい花言葉だと、紫は思った。
　妹にあげた栞の菜の花の花言葉は「快活」「明るさ」だった。
「あの子らしいわね」
　そろそろ行かないと、と栞を挟み、家族が待つ食卓へ向かった。

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