ことのはあそび　～新た夜～｜リアクション

ことのはあそび　～新た夜～

●大好きな子と実感する春

　１年生の頃。七夜あおいと同じクラスになった当初は、さほど気にも留めてなかったように思える。
　九夜山トレッキングで、あおいが作ったお弁当に関する一件では「七夜」と苗字呼び捨てだった。
　お弁当の件を謝罪し、少し打ち解けた学級委員を決める時のホームルームの時も苗字で呼んでいた。
　名前で呼び始めたのは、随分と仲良くなってきてからだっただろうか。
　そんなことを、ふと、思い出す。
　
　２年生。別々のクラスになったが、学校行事や寝子島でのイベント等で交流する機会はあった。
　寝子島神社に初詣。シネマカフェで映画鑑賞。コルネ作り。
　特に印象深いのは、アニマル♡ウェディング撮影会。
　撮影開始時は愛猫ミルクと地中海を思わせる色のマーメイドドレス姿のあおいだけの撮影だったが、一緒に撮ろうと誘われた。
　飛び入り参加もOKということ。あおいのお誘いということもあり一緒に撮影することに。
　猫の飛び入り参加というちょっとしたハプニングがあったが、とても楽しかった。
「あおい、綺麗だったな」
　アニマル♡ウェディング撮影会を企画した雑誌社から贈られた写真を見て、いつかは……と未来を想像する。

　３年生になった今。
　八神修は、あおいとまた同じクラスになった。
　あおいは卒業後、介護医療系の専門学校に進学しようかと思っている。
　そうなれば、修とは別の道を歩むことになる。
　だからこそ、残りの寝子高生活を楽しく過ごしたい。卒業式の日まで一緒にいたい。
　そんなことを席に着いて考えていると、あおいに声をかけられた。
「修君、どうしたの？」
　心配そうに顔を見るので、ちょっと考え事をしていただけだと答えた。
「心配させてごめん。寝子高生活も終わりなんだな、と思ってた」
「私達、もう３年生だもんね」
　屈託のない笑顔でそう言うあおいの顔を、あと、どれだけ見ることができるのだろうか。

　お昼は、あおいと一緒にお弁当を食べた。
「それ、ふきのとうの天ぷら？　美味しそうだな」
「食べる？」
　そう言って、あおいは修にひとつ天ぷらをあげた。
「うん、美味い。これを見ると春になったなあって気がするよ」
「そうだね」
　今日のあおいのお弁当は、ふきのとうの天ぷらを含め、春を連想させるおかずが多かった。
　それを見て、料理の腕を上げたなと修は微笑む。
　
　残り少ない寝子高の春を、あおいと実感したい。そう思う修だった。

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