猫鳴館の付喪神｜リアクション

猫鳴館の付喪神

　恵御納夏夜は賑やかな声で目を覚ます。上体を起こし、ぼんやりとした目を窓に向けた。
「……今日は日曜日、だよね？」
　不信感を抱いた様子で立ち上がる。こげ茶色の髪を軽く手で整えながら窓越しから外を眺めた。
　敷地の空いたところに人が集まっていた。中心にバーベキューコンロが見える。近くには折り畳みの長机があり、紙皿や紙コップが置かれていた。あとから重そうなクーラーボックスが追加された。
「あとは食材だな」
「これから買い出しだ」
「付喪神の歓迎パーティーは正午だからのんびり選べるよね」
　話し声を耳にして、なるほど、と夏夜は状況を把握した。
　――誰でも参加できそうだね。あと付喪神は、この間のエイプリルフールの影響なのかな？
　夏夜は布団に戻る。枕元に置かれていたスマートフォンを手に取った。
「たぶん、興味あるよね」
　指で操作してスマートフォンを耳に当てる。八回の呼び出し音で恵御納夏朝に繋がった。
「寝ていたみたいだね」
『そんなこと、ないよ。おはよう、夏夜ちゃん……ぁふ……』
「欠伸が聞こえるよ」
『うん、まあ、日曜日だからね。それでどうしたの？』
　眠そうな夏朝の声に夏夜は少しの間を空けた。
「猫鳴館で今日の正午に付喪神の歓迎パーティーをするみたいだよ」
『そうなん、え、付喪神さん！？』
「みんなで食材を持ち寄るみたいだよ」
『ハルくんと一緒に行くよ！　あ、その前に買い出しに行かないと。夏夜ちゃんも参加するよね』
　興奮した様子で聞き返す。夏夜は小さく頷いた。
「そうだね」
『着替えたらすぐに出るね！』
　時間が惜しいとばかりに通話が切れた。夏夜は口元に微かな笑みを浮かべる。
「パジャマでも着ていたのかな」
　言いながら黒のパーカーを羽織ると窓を開けた。
「僕も参加するよ。食材はもちろんだけど、燃料の炭は足りているのかな」
「人数によっては足りないかも」
　猫鳴館の住人の一人が答えた。
「念の為に僕が買ってくるよ」
「ありがとう、助かる」
　にこやかな笑みを交わすと夏夜は部屋に引っ込む。財布の中身を確認して速やかに部屋を後にした。

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