日曜日の早朝、猫鳴館の一室で横になっていた
邪衣 士は、むくりと身を起こす。ぼんやりした目で四畳半の和室を眺める。
「いつも通りだ」
赤い目に強い意志が宿る。早々と出掛ける用意を始めた。
凶暴な熊を描いたシャツにジャケットを合わせる。最後に羆の毛皮を頭から被ると得意げな顔付きで部屋を後にした。
薄暗い軋む廊下を突っ切って外に出た。力強い一歩を踏み出した瞬間、そうだな、と呟いてスマートフォンを手に取った。
ずらりと並んだ名前から
伊賀 解理を選んで電話を掛ける。五回の呼び出し音で相手と繋がった。
「こんな早い時間になんだ?」
静かな声のあと、手で探るような音が聞こえた。
眼鏡を掛けた顔が容易に想像できる。
「すまない。今日の予定はあるか?」
「ないが」
「そうか。今日、猫鳴館の手前の空き地でバーベキューをしようと思う。参加してくれないか」
「急な話だな。何か理由でもあるのかい?」
聞かれた士は一度、周囲を見回した。近くに人の姿はなかった。
「
エイプリルフールが切っ掛けだ」
士は淡々とした口調で事情を語った。
少しの間が空く。
「わかった。その付喪神の歓迎パーティーに僕も参加しよう。食材は適当に持っていく」
「ありがとう、助かる。では、また後で」
通話を終えると、ほっとした表情になった。スマートフォンをポケットに戻そうとした、その手を止めた。
「もう一人、確保するか」
メール機能を利用して
雨崎 荒太郎に掻い摘んで伝える。返事が来る前に士は歩き始めた。
鬱蒼とした木々に挟まれた坂道を軽快な足取りで下っていく。整備された歩道に出るとスマートフォンが軽やかな音を立てた。
『すごい話でびっくりしたよー。もちろんぼくも参加するねー。食材は任せてよ。
あとその付喪神の
猫館 鳴ちゃんはどんな感じなのかなー。第一印象って大事だよねー』
「どんな感じか……」
画面を見て黙り込む。半眼となって考え、素早く文字を入れて返信した。
その文章を目にした荒太郎は驚いたのか。一分と掛からないで返ってきた。
『斜めパッツンで返されてもねー。まあ、会えることを楽しみにしているよー。
他のメンバーにも伝えておくよー。あー、それと買い出しなんだけど、迷わないでねー』
「さすがにそれはない」
苦笑いで歩き出す。
その三十分後、目指した肉屋は何故か八百屋に変わっていた。
「何故だ?」
士は額に手を当てる。苦み走った顔で取り敢えず、ネギとタマネギを買うのだった。
今回のシナリオは猫鳴館の付喪神、猫館 鳴(ねこだて めい)にまつわる話になります。
「希望<ネガイ>が現実<ホント>になるところ。それがらっかみ!」のアクションの中から、
選ばれたアイデアをらっかみ!の世界に正式に組み込みます。キャラクター登録は少し先になりますが、
その前にお披露目という感じでシナリオに早々と登場です。今後の展開を楽しみに待っていてください。
シナリオガイドに登場していただいた、邪衣 士さん、伊賀 解理さん、雨崎 荒太郎さん、ありがとうございました。
本シナリオにご参加された場合、ガイドに縛られず、伸び伸びとアクションを綴ってください。
それでは詳しい説明に入りたいと思います。
∞∞∞今回の舞台∞∞∞
日曜日の猫鳴館。空きスペースでバーベキューを行います。
バーベキューコンロや細々とした調理器具は住人によって発掘されました。
あとは持ち寄った食材で、問題なくバーベキューを楽しむことができます。
∞∞∞アクションで出来ること∞∞∞
付喪神の歓迎パーティーの一面はありますが、ほぼ自由に行動することが可能です。
猫鳴館の住人以外の方も参加できます。例6を参考にしてください。
例1:猫館 鳴との交流を深める。
例2:焼かれた肉を片っ端から食べる。肉争奪戦に発展して大騒ぎになる。
例3:BBQで周りが盛り上がる中、昔の記憶を思い出す。
例4:恋人同士で参加(GA)して二人だけの世界に浸る。
例5:BBQのあとの地下帝国がメイン。裏寝子温泉のハプニングを楽しむ。
例6:猫鳴館の住人(GAの相手、またはモブ)にBBQを誘われた。
∞∞∞ NPC ∞∞∞
・猫館 鳴(ねこだて めい)
猫鳴館に十六年前に宿った付喪神で、見た目は十六才の小柄な少女。
艶やかな黒髪のセミロング。猫目で目尻は少し上がっている。色白の為、唇の赤さが際立つ。
前髪に特徴があり、左斜めに切り揃えられている。指摘されると少し機嫌が悪くなる。
茶色い作務衣が普段着で、それに相応しい白い足袋を好む。木目の美しい草履も気に入っている。
性格はおおらかで明るい。猫鳴館と等しく、誰でも受け入れる。
少し長くなりましたが説明は以上になります。
猫鳴館の付喪神は誕生したばかり。まだまだ成長過程にあります。
今後の展開をお見逃しなく! らっかみ!の先輩として可愛がっていただければ!
ご参加、お待ちしています。