魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――｜リアクション

魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――

　スピカは、無心で泡を破壊することに専念する。それをみた夏夜もまた呼吸を整えて攻撃力を上げ、ついでに猫が喉を鳴らすような音が。その直後泡を散らす雷。『猫喉鳴らし』を使ったのだ。これは雷属性の高威力単体攻撃を行うと同時に自分のBSを解除する。
（MP消費は大きいがネックだけど……）
　出し惜しみしている場合じゃない、と夏夜は内心で不敵な笑みを浮かべる。
「これもおまけよ！」
　反撃に備え飛び込んだReiもまた『雷神の怒り』を叩きつける。眩い雷光を纏った一撃が決まり、邪魔な泡は音を立てて全て消える。
「ありがとうっ！」
「これで攻められる！」
　真白とアシュリーが飛び込み、僅かに硬直したマモルソラへと攻撃する。それにより、羅針盤に小さな罅が……！

　――やってくれたな！

　マモルソラの幻影が、僅かに表情を険しくしたかと思えば銀色の影が出現する。再び『銀の嵐』が吹き荒れようとしているようだ。
「もう！　相手は私！！」
　二一が叫び、後衛組を襲おうとしたイワシの群れを引き付ける。彼女だけにダメージの肩代わりはさせられない、と夢乃もまた声を出して挑発し、イワシの分散を狙う。
　前衛組がイワシの群れに包まれようとした中、舌打ち一つ、楓が無数に呼び出した金属の弾丸でイワシを襲い、着ぐるみさんが土術『フォッグブレス』で命中率を下げる。
　味方の回避援護には、少々前に出た拓哉がもう一度『神風』を巻き起こして援護する。
（この風に乗れば……！）
　夏夜はタイミングよく『シーヴスラウンド』を発動させ、乗りに乗ってイワシの群れを攻撃し道を切り開く。
　だが、イワシの群れが晴れればサメが尾びれを揺らし向かってくるが見えた。それも５匹も……！

　――オレは甘くねぇんだよ！

　幻影のマモルソラが、どうだ、と言わんばかりの笑顔を見せる。だがその表情もすぐに崩れることになる。
「トワもシャチに乗りたいのデス！　サメさん協力してくれないデスカネー？　Shark rider！」
「そう言っている暇はなさそうだ」
　トワが目を輝かせながら前衛を『妖精の鱗粉』（一定時間HP回復するスキル）で援護すれば、アシュリーが『ランペイジ』でバフ増し状態でノリにのってラッシュ技『狼の群れ』を放つ。無属性ではあるが、使い勝手が良いラッシュ技は『ランペイジ』と相性が良い。
「こっちは任せて」「私もいくわ！」
「後衛組は任せたよ～っ！」
　魔導士たちを狙うサメを引き付けるべく都と碧南が動き、二一がマモルソラの攻撃からトワと真白を庇う。Reiと夢乃もまた前衛側に立ち、後衛に攻撃が通らぬよう布陣する。
　後方へ飛んでくる珊瑚を都が物理遠距離攻撃へのカウンターとなる『フルスイング』で珊瑚を弾く。常に展開している『ウォール・オブ・オブシディアン』の効果でカウンター効果も底上げされており、マモルソラやサメを苛んでいる。その背後から拓哉が『嵐ノ魔弾』でサメを攻撃し、着ぐるみさんと楓が援護する。
（まだ準備は整ってないか……）
　楓がサメへ金属片を投げれば、雷属性も持つ『嵐ノ魔弾』が猛威を振るう。金属片が雷を属性の魔法を引き付け、威力を上げているのだ。
　そしてサメを鞭で攻撃しつつ体力を吸収。どうやら着ぐるみさんが木術『エナジードレイン』を使ったようだ。

( >ㅅ・) ＜こうかはばつぐんだ！

　事実、『エナジードレイン』をサメが喰らえばマモルソラのHPがぐっ、と減る。思わぬ攻撃にマモルソラは驚愕しているようだった。

（何故だろう？　なんなんだ、この違和感）
　戦闘の只中で、楓がふと胸騒ぎを覚える。周囲を見渡すも、その原因だろう物はない。
「どうしたの？　戦闘中よ」
　急に飛んできた珊瑚から庇う碧南の声で我に帰り、楓は「すまない」と眼前の敵に意識を向ける。だが……。
「極天使や魔侯爵、精霊とは違う……酷く冷たい何かを感じた。捕食者が獲物を狙うような視線だと、俺は思う」
「……えっ？」
　楓の呟きに、碧南は僅かに困惑した。