魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――｜リアクション

魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――

　レイドが始まる前、ステータスの確認などしていた彼は、いつの間にか鉄扇を手にしていた事に首を傾げた。
（この重いのは武器やろか？　おじいちゃんの部屋で見た様な……？）
　その時の事を思い出した少年の顔に、笑みが浮かぶ。鉄扇を手に、拓哉はサメへと魔法を放った。

（想像以上に、展開が早い）
　夏朝は、海底より噴き出した水蒸気をギリギリ躱し、自分を守るように立ちはだかった花咲夢乃へ治療を施す。
「ありがとうございます」
「いいよ。治療が役目だからね」
　　夏朝がにっこり笑い、周囲を見渡す。次に治療が必要な人を探しているのだ。
（壁役を務めつつ、突出せずに周囲に目を配りながら……案外難しいですね）
　夢乃は飛んでくる珊瑚から夏朝を庇いながら、内心でため息を付いた。だが、今は無理せず仲間の足を引っ張らないことを優先した。
（今回は、治癒士が一人だけ……。生命線でしょうね）
　夢乃が把握しているだけでは、確かに治癒士以外にも治癒スキル持ちやら道具をもっている者はいる。だが、彼女を戦闘不能にしてはいけない、と直感で感じていた。
　前を見れば、泡で身を守る羅針盤を『ハイボルテージ』で速度を上げたスピカが果敢に攻め立てる。彼女の纏う稲光が泡に触れる度、パチン、パチン、と音を立てて泡が弾けていく。
「ぐぬぬ……この泡思いのほか固い……？」
　真白は泡の壁の前でため息を付く。彼女が泡を切り付けても弾くだけなのに、稲光を纏ったスピカの攻撃だと泡がはじける。どうやら、雷属性の前には屈してしまうようだ。
（泡は、稲光に弱い？）
　スピカは、こくん、と頷いた。
「……大丈夫。　私が、開く！」
　スピカが拳に雷を纏わせふりぬけば、雷の槍が泡をはじいてマモルソラ本体を攻撃！

　――やるじゃねえかっ！

　同時に沢山の泡が巻き起こり、それが晴れた後に現れたのはシャチに跨った、活発そうな少年だった。どうやらマモルソラが羅針盤から姿を変えたようだ。
「！　一回退避するわよ！」
　碧南の言葉に一同頷き、マモルソラから離れる。同時に放たれる三筋の海流。『渦潮のトライデント』により、戦場がかき乱される！
　しかし、この技の弱点は、海流が起こる場所がわかりやすい事である。敏捷性の高い軽戦士や拳闘士は悠々と回避できるほどに。それに、まだ拓哉がかけた『神風』の効果は終わっていない。その為、巻き込まれたのは重戦士の中で一番回避値の低い二一だけ。しかも、頑丈な鎧の効果やかけていた防御力上昇のバフのお陰で被ダメージも少ない。
（さすが、というべきかしら？）
　二一は身に纏った鎧の防御力やバフを誇らしく思い（……と、同時に今回のモデルとなったキャラクターの頑丈さを何となく再確認し）小さく笑う。
（その形態なら、魔法攻撃の方が、与えるダメージが大きいのだよ）
　着ぐるみさん（の中の月詠）は冷静に考察し、他の魔導士２人を見やる。

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( 'ㅅ')━☆゜.*　＜今こそ魔法の時間だヨ！！

「あのウサギさん、えらいおもろいわぁ♪」
　拓哉はタコが付いたウサギの着ぐるみが面白かったらしく、ちょっと楽しい気分になる。それでやる気が湧いたのか、鉄扇を閉ざして呪文を唱え始める。
（装備に色々ツッコミたい気分になるが、スキルや装備のチョイスはいいんだよな）
　一方の楓は着ぐるみさんを見、内心で苦笑いになる。だが、素早く呪文を唱え、渦が解けた刹那を狙う。
「いけっ！」
　金属性魔法『ニードルレイン』でマモルソラを攻撃すれば、それに合わせて着ぐるみさんと拓哉もまた魔法を放つ。
　拓哉の鉄扇から生まれる風が、唸り激しさを増して帯電し弾丸となってマモルソラを襲う。風と雷の複合魔法『嵐ノ魔弾』だ。
　そして着ぐるみさんの鞭から放たれた敏捷度を下げる雷属性の『サンダープリズン』で足止めする。
（魔導士が、次は狙われそうですか？）
（ヘイトがそっちに向きそうよね）
　夢乃とReiが頷き合い、後方へと下がる。都、碧南、二一もまたヘイトを稼ぐべくシャチに跨るマモルソラへと向かう。