魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――｜リアクション

魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――

　――おもしろくなってきたなっ！

　マモルソラがシャチを叩き、大暴れすれば尾びれで向かってくる重戦士たちへ攻撃する。その強力な一撃に、思わず都が笑う。
「これならどうかなっ！」
　タイミングよく放たれる『ブレードバッシュ』に、シャチが跳ねる。どうやらうまくキャンセルできたようだ。物理攻撃は入りづらいが、やらないよりはいいだろう、と二一はきれたバフを盛りなおす。
（攻撃は、最大の防御といったかしら？）
　碧南が大剣で攻撃を捌く。襲い掛かってくるシャチを押し返し、ヘイトを自分に向けさせようと、指で挑発をかける。
「さぁ、あそんでくれるわよね！」
　碧南の声に、シャチが何とも言えない轟音を立てた。少年の姿では物理攻撃のダメージが入りにくいが、ヘイトを集めるという意味では成功しているようだ。
（もうちょっと様子見したほうがいいかな）
　夏朝はどこかで『癒しのキャットランページ』を使おうか、と考えていた。これは一度の戦闘に２回までしか使用できない上、使用者に高確率でバットステータス（以下BSと表記）【躊躇】が付く。だが、猫の幻影を大量に呼出し味方全体のＨＰとＭＰを回復すると同時に敵全体攻撃力大幅に減らす効果を持つのだ。
　だが、夏朝が別のスキルを使おうとした瞬間、僅かに地面が揺れる。同時に熱を覚え、咄嗟に避ける。いつの間にか再び羅針盤の姿となり、熱い水蒸気を呼び出したようだ。
（案外早い？）
　夏朝はすぐさま周囲を見渡し、『突沸の槍』で負傷しただろう二一へと治療を施す。
　顔を上げれば、再び拳闘士と軽戦士たちが羅針盤姿のマモルソラへと殺到する。
「さっきまでは、どーにか治療してたけど……剣を振り回していくまShow！」
（トワ、大丈夫か……？）
　ジョブに関係のないBS解除スキル『フェアリーサークル』で援護していたトワが、手にしたソートソードを振るう……のだが「ターンは何時デスカ？！」というぐらい入り込めそうな隙が無い。
　スピカの稲妻を纏った一撃に続く、真白の鋭い一撃。マモルソラはそんな二人を磁力で突き放すも、入れ替わるようにアシュリーが拳をふるう。
　勿論重戦士たちだって負けてはいない。ヘイト管理を念頭に置きつつ動く彼女たちが入れ代わり立ち代わり、他のメンバーを適度に庇いながらも徐々にダメージを与えていく。
　それでいて後衛職のガードにもつき、交代しながら囮に盾にと奮闘する。
「……とりあえずいくですっ！」
　トワがするり、と隙をついて武器を振るう姿を、楓はちょっと驚いた様子で見ていた。案外様になっているのは、ゲーム仕様なのか。
　そうしつつも己の準備も忘れない。
（このまま、場所を整えていけばいいか）
　電磁紋を確実に増やしつつ、楓が仲間を見れば着ぐるみさんも、拓哉も様子を見ているようだった。
「うーん、敵の攻撃が前衛に集中しがちやね」
　それ故に、後衛は落ち着いていられるのだが、それが嵐の前の静けさのように思え楓はため息を付く。

/) /)
( 'ㅅ')ｳｻｧ＜油断しない程度に準備しよう

　着ぐるみさんも、戦況を見守りつつ何か考えているらしい。楓は少し離れた所にいる夏朝を見る。と、たった一人故に回復技を多用し、MPの減りが早いように思えた。
「MP回復ポーション飲んでおいたほうがいい」
「ありがとう」
　夏朝はそれを飲み、早速深めの負傷を追ったスピカへと治療を放つ。その姿を見ながら、楓はマモルソラを見た時、マモルソラの周りを泡が包み込んだ。
「またぁ？！」
　思わず真白が声を上げる。物理攻撃が通りやすい羅針盤の姿なのに攻撃できないのはとてもやりづらい。だが、そこに飛び込む者一人。
「行く」
　スピカは何度目かわからない雷の槍でマモルソラを攻撃する。特殊な泡が邪魔でダメージを減らされているような気はするが、これを壊すにはスピカが纏う稲光が効果的である。
（それに、この泡が壊れる度に少しはマモルソラにダメージが入っているみたい）