魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――｜リアクション

魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――

（余裕がある、というのはありがたいかもね）
　夏朝は、サメなどで負傷した夢乃を『ふわふわきんねこヒーリング』（以下、金猫と表記）で回復させながら、BSが添付される確率が減っているような気がした。これは単純に対策出来ている者が多かったからだろうか。
（それはそれでいい流れだよね）
　夏朝は表情を引き締め、仲間たちへと叫ぶ。彼女の観察眼が確かならば、マモルソラのHPも心もとない状態になっているはずだ、と。
「もうちょっとで、落とせるよーっ！」
「気合いれていきましょう、皆さん！」
　合わせるように声を上げたのは、夢乃だ。彼女は夏朝を守りながらも『人魚化』スキルを発動し、敏捷度を上げた。美しくも艶めかしい人魚の尾を得た夢乃は、大剣を手に襲い掛かってくるサメを翻弄しながら戦う。勿論、他にサメと戦うアシュリーや拓哉とも連携を取りながら。
　最初は皆の足を引っ張らぬように戦っていた彼女だが、慣れると周りの動きをよく見ながら『何をするべきか』判断できるようになっていた。そして、思い切りのよい戦いを見せる。
　大剣で豪快にサメを切り伏せれば、夢乃はくすりと笑った。

　

（これが、表舞台……センターの気持ちなのかもしれませんわね）

　マモルソラはひび割れた状態で泡を放ち、その姿を少年へと変えた。だが、それはある意味魔導士たちの出番である。
（魔法攻撃のダメージが入りやすくなるんだろう？）
　楓は内心でニヤリと笑う。シャチに乗って暴れるマモルソラから前衛組を守ろうと夢乃たち重戦士が庇うべく前に出、自然と道はできる。

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( 'ㅅ')　＜そろそろかな

　着ぐるみさんは拓哉に下がるようジェスチャーし、楓は運よく仕込んでいた陣が無事であることに胸を撫でおろす。そして、そこに収まるは、トワ。
「雷属性の魔力をたっぷり纏わせた。……あとは」
「attackあるのみ、デス！」
　稲光でふわふわの髪がまばゆい光を放ち、僅かに浮かぶトワ。拓哉はぽん、と手を打って一回転。三度『神風』を発動させる。そして、着ぐるみさんが氷塊をぶん投げる『フロストクラッシャー』でシャチを誘い込む。
　氷解を避けるシャチだが、その先にいるのは……トワである。
「おっ？　なんか面白そうなことするねぇ」
　都がシャチの攻撃から庇いながらニヤニヤ笑えば、楓は簡単に印を切った。
「これで、とどめといこうぜ！　いけ、トワ！」
「OK！　Takeoff！！」
　泡と雷光を纏い射出されるトワが、シャチとマモルソラの反応速度を超えて体当たりする。僅かに遅れて響く轟音。水が震え、同時に巻き起こるは、大量の泡。再び巻き起こる『深き青の極楽』に、冒険者たちは慄く。
　激流にもまれ、ダメージを喰らう。だが、夏朝が渾身の『猫突』を発動させることでギリギリHPを持ちこたえる。
「こちらも、ギリギリですね」
「でも、これで終わり」
　Reiが戦斧を手に表情を引き締め、雷光を纏ったスピカが泡を割って道を作る。それに続くReiと夏夜もまた、光を纏って滑っていく。

　――沈め！

「それはどうかな」

　夏夜が笑う。その視線の先、マモルソラへとスピカが怒涛のラッシュを見舞うのが見えた。それに続き、夏夜も『猫喉鳴らし』を発動し、勢いよく叩きつける。
「覚悟！」
　そして、Reiが『雷神の怒り』でシャチごと少年を吹っ飛ばした。

　――てめぇら！！！

　シャチが泡となって消え、少年の身体もぼろり、と泡となった。が、瞬時に泡が集まり羅針盤となる。
（まだ、あるというの？）　（まずい、皆かなり消耗しているのに）
　スピカが、夏夜が海底に着地し身構える。そうしている間に、次々に仲間たちが降り立つが……視線の先、羅針盤が派手に割れるのを見たのだった。

　バラバラになった羅針盤。
　消えていく泡。
　冒険者たちは、誰一人かけることなく試練を突破し……、ややあって、喝采を上げたのだった。