魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――｜リアクション

魔界からの試練　――深海よりの導き手マモルソラ――

（まさか……！）
　楓は、トワだけは守ろうと彼女を抱きしめる。都は近くにいた拓哉を抱きしめ、着ぐるみさんもまた４人と共に固まり、激流に耐える。だが、その時、トワに触れた泡が音を立てて幾つも割れる。
（もしかして？！）
　楓がある事に気付いた途端、前方の泡が壊れて道が出来、いっきに５人とも滑っていく。

　その主な原因は、スピカたちだった。
（この泡でも……！）
　スピカが真白、Reiと頷き合い、激流の中でも雷と風を纏った一撃を見舞う。その強力な合体剛撃が多くの泡を壊して道を作り、泡を滑って海底へと叩きつけられる。
　その割にダメージが少ないな、と二人が思っていると、Reiが受け止めていた。
「大丈夫……？」
「これぐらい、平気ですっ」
　スピカがHP回復ポーションを渡しつつ問えば、微笑むRei。しかし、MPもHPもそこそこ危ないラインに差し掛かっており、内心焦っていた。
（けれど立ち止まる時間はないな）
　Reiの中のレオンは、心を引き締める。Reiは戦斧を手にマモルソラを切り付け、それにあわせスピカも攻撃を仕掛ける。
「……いいタイミング！」
　スピカは漸く最大まで雷纏うマックスボルテージ状態になり、眩い光に包まれる。彼女自身が稲妻と化し、Reiと連携を組んでヒットアンドアウェイ攻撃を見せた。

　泡がはじけて道ができることで、激流から抜け出る者たちがちらほら現れた。
（まだ足りなかったか）
　トワに貯められた雷の力もまた、泡を壊すのに役に立ったらしい。正し満タンにたまっていたならばもっとたくさんの泡を壊せたかもしれないが……と楓は考えたが、すぐに意識を戦場に移した。
　泡がすべて消えた時、全ての冒険者が泡の道から滑り降りた為壁に叩きつけられてはいなかった。
　ひび割れた羅針盤は、そんな冒険者たちに休む暇は与えぬと言わんばかりにサメを放ち、金属を引き付ける磁力を発生させる。
「くっ……」
　夏夜は咄嗟に『威力拡大』と『盗賊の閃き』を同時に発動させる。そのお陰で二一を含め数名が回避成功する。
「サメなら」「任せてなぁ」
　アシュリーがサメに殴りかかり、少し離れた場所から拓哉が『嵐ノ魔弾』でサメを撃つ。
「所でサメって美味しいんやろか？　それによう見たら可愛いし、持って帰ったらアカンやろか……」
「……うーん、どうだろうな」
　拓哉の呟きを聞いた都は首を傾げるも、落ちてきた瓦礫を『フルスイング』で飛ばし、何かあればこの少年を守ろうと注意深く見守る。

「こっちよ！　最硬のヒロインが相手してあげる！」

　ヘイトを稼がんと前に出る二一が、盾でもってマモルソラの前に立つ。真正面に突っ込んだサメの顔面を盾で打ち据えれば、サメが痛みで悶絶し、トワが振るうナイフによって屠られる。
「うぅ、BSはだいじょーぶそーですねー。なら、こっちですかねー」
　彼女はジョブ無関係の『フェアリーサークル』で仲間を援護し、夏朝の負担を軽くする。そのお陰で、夏朝のMP消費量はやや抑えられているらしい。
「ありがと！　それじゃあ、こっちもいっちゃうよー！」
　真白は尾びれを力強く動かし、『チェイストリガー』を発動させながら攻撃する。真白に続くスピカとRei、夏夜の攻撃にも連撃が乗り、更にマモルソラを追い込んでいく。
「また皹が大きくなった！　このまま行こう！」
　羅針盤の様子を見た夏夜は、攻撃を続けるよう仲間たちに発破をかける。

（ゼンセンは入れないですねー）
　トワは僅かに下がりつつマモルソラと対峙する面々を見た。スピカが稲妻を纏って泡の壁ごとマモルソラを攻撃し、連携した真白とReiがそれに続く。攻撃が来ればReiが見事な戦斧捌きで庇い、もしくは二一の頑健な盾によって防がれ、隙を見てスピカが再び躍り出る。磁力攻撃がくれば二一が壁となって勢いごと体当たりしてスピカたちが避難する時間を作る。
　それだけではない。３人を狙うサメを、夏夜が俊敏な動きで翻弄し、時折離れた所から敵へデバフを与える着ぐるみさんの力もあって前線は保たれていた。
（どーしましょーかねー）
　と考えていたトワだったが、楓と目が合った。
「来い！」
「！　よく解らないけど行くマス！」
　トワはワクワクしながら楓の元に向かった。