今日はニャンの日？　猫の日フィーバー！｜リアクション

今日はニャンの日？　猫の日フィーバー！

【神社にて（１）】

　夕刻。
　綾辻綾花さんは、放課後、公園と猫で遊んでいた帰りにたくさんの猫達の楽しそうな声を聞きました。
「神社の方から……？」
　あまりに楽しそうな雰囲気に、ふらりと神社の方に向かった綾花さんは、そこでばたりと早川珪先生に出会いました。
「あ、珪先生」
「やあ、綾辻さん、奇遇だね。何やら楽しそうな声が聞こえたもので、ついね」
「私もそうなんです。いったい猫達は何をしているんでしょう？」
「ちょっと覗いていこうか？」
　大好きな珪先生にそう誘われて、綾花さんに断る理由はありません。
　二つ返事で頷いて、ちょっぴりデート気分を味わいながら境内に入った綾花さんはそこで目を見開きました。
「これは……」
「猫が……宴会しているね」
　二の句を告げない綾花さんにかわって、早川先生が見たままの情景を説明。
　そう。神社の境内では、たくさんの猫達、それと何人かの人間達が飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをしていたのです。
「おや、新しいお客さんかい？」
　と、そこで猫の輪に加わって酒盛りをしていた猫屋敷宝さんがちらりと顔を上げて言いました。
「あの、これはいったい？」
　当たり前のように猫達と酒を飲み交わしている宝さんに、綾花さんがなかば呆然としながらそう問いかけます。
「見てのとおりだよ。お三夜様が宴会をするって言うんで、ご招待を受けて馳せ参じたわけさね。ほら、お嬢さんとお兄さんもさっさと座りなさいね」
　猫の言葉がわかる宝さんの言うことには、人間の飛び入り参加も大歓迎とのこと。
「これは随分と豪華ですね」
　焚き火のそばに置かれたお皿とその上に載った厚切り牛ステーキを見て、珪先生は驚いたように呟きます。
「こいつはあたしが旧市街で買ってきたお土産さ。ちなみにその横にあるのはマタタビ酒。なまなかな猫にはちょいと刺激が強すぎる酒だが、まあお三夜様なら大丈夫かと思ってね」
　ニヤリといたずらっぽく笑う宝さんに、綾花さんと珪先生は思わずというふうに顔を見合わせてクスリと笑います。
「あら？　いつのまにか人間さんが増えてますねぇ」
　そこに日本酒の入った徳利とおちょこをお盆に載せたシオ・レイゼルオークさんもやってきて、二人に着席を勧めます。
　といっても、綾花さんは未成年ですので、お酒は飲めません。
「なぁに。安心なさい。あたしゃ無理に酒はすすめませんし、ちゃーんとソフトドリンクの類も用意してありますよ」
「そうそう。さっきまで、お三夜様にどんな着物が似合うかで盛り上がってたんです。ぜひお二人の意見も聞かせてください」
　シオさんはそう言って、お酒を飲めない綾花さんに「あられ」や「お茶」を用意してくれます。
「頂いてもいいんですか？」
　突然の飛び入り参加でそこまでしてもらうのはちょっと恐縮に思えた綾花さんがそう聞けば、
「もちろんです。さっき狛猫さん達にもお水・日本酒・おつまみを献上してきましたし、遠慮はいりません」
　シオさんは、落ち着いた大人の風情の表情に、少女のような軽やかさでもってそう微笑みます。
「じゃあお言葉に甘えてご一緒させてもらおうか」
「はい！」
　こうして、夕暮れの神社で、お三夜様と猫たちを囲んだ楽しい宴が幕を開けます。