【新年度】スプリングキャンパス！　わくわく大学生♪｜リアクション

【新年度】スプリングキャンパス！　わくわく大学生♪

☆番外編　大学生を想う

　寝子島高校も入学シーズンが終わり、周囲が落ち着きだしたある日。
「ただいま」
　高校３年生に進級したばかりの椎井莉鳥は、午後７時を少し回ったころシーサイドタウンの自宅に帰宅した。
　陸上部の部活と後片付けが長引いたので、少し疲れている。
　まだ新入生も入ってきていないので準備や片付けの人手が足りない。
　いずれ新入生が入ってきても、部の決まり事を教えたりするのが大変でもっと疲れるかもしれない。
　そのあたりは他の部員に任せておいても大丈夫だろうし、三年生は年度途中で引退となるので、こんな日々もずっと続くわけではないだろうが。
「おかえりなさい。お風呂沸いてるわよ」　
　母親から言われて、すぐに支度して風呂に入った。

　汗をかいた身体と髪をよく洗った後、シャワーで全身を洗い流してから湯船につかる。
「……ふう」
　手足を伸ばすと、心地よいお湯の熱さが身に染みる。
　疲れが熱い湯の中に溶けていくような感じだ。
　その感覚に身をゆだねているうちに、不意に元カレの雅樹の顔が浮かんだ。
「あいつ、ちゃんとやってるかな……」
　そのまま、いろんなことが思い浮かぶ。
（自炊ぐらいは猫鳴館で鍛えられてるから、そんなに心配はいらないと思うけど……そういえば雅樹は部屋を片付けるのが苦手だったよね……）
　家が近所で腐れ縁だった雅樹との思い出は、たくさんある。
（中学の時、何度かあいつの部屋に行って片付けたことがあった。それから……）
　追憶に浸りそうになった莉鳥は……ハタと気づいた。
　もう終わったことなのだ。
（いい加減にしてよ……少しでも気を抜いたらあいつのことを思い出す……）
　自己嫌悪に陥った莉鳥は、膝を抱えて、ずぶずぶと湯の中に身を沈めた。
　お湯の中で目をつぶる。
（もういい加減、終わらせてよ……あいつは今ごろ、京都で新しい彼女を見つけてるんじゃない？　眠そうな顔してるけど、シャキッとすればそこそこモテるんだから……）

　ザバッ！
　堂々巡りの思考から逃れようと、莉鳥は勢いよく立ち上がった。
　湯は莉鳥の心を翻弄するように大きく波立った。
　自分はこれからどうするのだろうか。
　去った者を追っても仕方ないと、頭ではわかっているはずなのだが。