【新年度】スプリングキャンパス！　わくわく大学生♪｜リアクション

【新年度】スプリングキャンパス！　わくわく大学生♪

☆サークル、何にする？

「新入生が大挙してやってきたわね」
　木天蓼大学文学部心理学科２年生の仙藤紫は、サークルの勧誘側としてその場にいた。
　紫も去年まで新入生だったが、来年には専攻によってどのゼミに所属するかを決定しなければならないので、大学の４年間は結構早い。
　一応専攻分野は自分の中で固まってきているけれど、そのゼミの雰囲気やら担当教授の性格やら、そういったことも含めて情報収集する必要がある。
　紫自身は将来、カウンセラーや研究職を目指している。
　必然的に大学院進学、と言うことになるが、そうなるとゼミや研究室における人脈をしっかり確立できるかどうか、そして教授とどれだけ知り合えるか親密になれるか等によって、研究内容ごとに研究職で就職する際に有利不利が生じるので、その辺疎かにすると後々トラブルになって人生設計自体が破綻しかねない。
（……まあ、深刻なことを今考えても仕方がないか）
　そういうシリアスなことはおいおい考えるとして、今日は所属している水泳サークルの勧誘活動を頑張ることにしようと思う。
　人目を引く美人の紫が座っていると、無理に声をかけなくても新入生が集まってくる。

　サークルを見に来た恩も、そんな彼女に目を留めた。
（あ、見覚えあるわ……寝子高で一緒だったかしら。スポーツ系は楽しそうだけど、私身体が弱くて激しいのは無理なのよね……マネージャなんていうのは私よりもふさわしい子がきっといるわよね）
　そう思って通り過ぎる。

「練習とかハードですか？」
　紫は質問してきた男子新入生に、笑顔で答える。
「基本的に緩いサークルです。気分転換やダイエット目的、水泳よりは交流目的の人もいるわ。けど、大会出場を目指す人にはしっかりとした指導も行うので」
　そんな感じで勧誘を行っていると。
「美人さん発見！　撮らせてくださーい♪」
　そこへスマホを構えた新入生が絡んできた。
　言わずと知れた笹川帆太である。
「なんだ君は！」
　隣にいた先輩が睨みをきかす。
　後ろで水樹は内心頭を抱えていた。
（勝手に撮るのはダメだから許可をもらって、とは言ったけど）
「どうも、新入生でミューチューバーの笹川帆太です！　動画撮影にご協力ください！」　
　物おじしない帆太に、先輩は呆れた顔だ。
「うちは普通に勧誘してるだけの水泳サークルだから撮っても面白くないよ。よそを当たってくれ」
「ははあ、了解です。では今度プールで撮影させていただきますね」　
「お断りだ！」
　追い払われた帆太共々水樹はその場を去る。
（ミューチューバーのパンダ？　いろんな人がいるものね）
　妹が見たら面白がるかもしれない、と紫は思った。

「水泳。いいですねえ、今度先輩の水着姿もぜひ撮らせてください」
　移動中も撮影しながら水樹に言う帆太。
「お断りよ、そろそろ帰らせてもらうわ」
「まあそう言わずに。今度は文化系も見てみましょう」
　カメラを向けられるとなんとなく振り切れないのは職業病だろうか。
　次に問題を起こしたら帰ろう、と思いつつ水樹は帆太についていくのだった。

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