【お花見】逢ひ見んことは命なりけり｜リアクション

【お花見】逢ひ見んことは命なりけり

　まあまあ、と萌はユウに一夜酒をお酌する。
「これさ、アルコールじゃないっていうけどさ、マジ飲んでだいじょうぶなんか？　やべーんじゃね？」
　だいぶユウはろれつが回らなくなっているようだ。変なしゃっくりまで出ているし顔はだいぶ赤い。
　ふーん、ユウくんは悪酔いするタイプじゃないのかな。
　でもこの先を見るのはMMRの使命！
　ていうかボクもだいぶ酔ってきたし～。
　だからボクが大胆になったとしても許されるんだ！　うん！
「ユウく～ん、ボク、なんだかぽかぽかする～～」
　甘えてからもうとすると、ユウにおしのけられた。
「鬼河内、あちーよ！　やめれ」
「ちぇー……っていうか酔いが足りないみたいだねユウくーん」
　これはもっと押せ押せだ、と萌は決めた。
「ほらほらもっと飲んじゃいなよ☆」
「いやこれ以上まずいって、ヤクイって」
「なに『ヤクイ』って？　『ヤバイ』のまちがいでしょ？　ささ、ここはさくちゃんの異世界a.k.a.治外法権っぽいし、がっつり飲んでも大丈夫だよ～」
　ぐいぐい勧める。ぐいぐい注ぐ。
　しょうがねえなとユウは付き合う。
　いける！　萌は勝利を確信した。
　酔っ払ったユウくんは踊るタイプか脱ぐタイプか泣くタイプか、これはMMR的に突き止められそうだ……！
　しかし。
「おやすみ……」
　ユウは、わりと一般的なタイプだった。
　すなわち、ずるずると伸びて寝落ちしたのであった。
　くっ……普通……！　まあ怒り上戸よりいいけど……！
　萌は歯噛みする。いや、悔しがる必要あるのかという気もしたがとりあえず。
　いつの間にか頭上の桜は、これ以上ないくらいの満開になっている。

「きれいですねえ……料理も飲み物もおいひいれすねぇ……」
　はれ？　と紫苑は首をかしげた。
　なんだか口調がおかしいような。
「ねえ、羽奈瀬さん、れしたっけ？　わたひおかしくないれすかぁ？　なんだか体がぽかぽかしへきまひたぁ♪」
「そ、そうですね……少し、あの膝が……」
　リンは直視できない。なぜって紫苑が膝を崩し、暑いと言ってスカートをまくりあげつつあったからだ。下着が見えそうなのでリンも上を見るほかなかった。
「あ……」
　そして気がついた。
　桜が、満開だ。
「ふふっ、さく、うれしい」
　ちょこんとさくが隣に座った。
「さくさんは、ほしびとではないんでしたよね」
「そうなの」
「だけど……聞いていいですか」
　さくがうなずくと、リンは思い切ってたずねたのである。
「銀色の髪の、とても明るくて元気な女の子のほしびとを知りませんか……？　探しているんです。あの子に会うために、僕はここへ編入してきたんです」
「わからないの」
　でも、とさくは言う。
「あなたが会いたいと願っていたら……願いつづけたら、いつかきっと会えるの。それが寝子島っていう場所なの！」
「そう……ですか」
　願いつづけたら、きっと会える。
　勇気をもらった気がする。