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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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【お花見】逢ひ見んことは命なりけり
響 蒼留人はまぶしげに空を見上げた。
スカイブルーの半分を、桜の枝と花が占めている。
「桜か。日本の心だな」
「心、ですか。なるほど」
マーガレット・ライカーが応じた。
桜を心と言い切るストレートさも悪いものではない。咲いてもそのさかりは短く、散ってはまた翌年花を付ける。その姿、むずかしくいえば輪廻を、自分の生き様に重ねたくなる気持ちはマーガレットにも理解ができた。
蒼留人とマーガレットはふたり連れだ。といってもデートといった浮ついた話ではない。蒼留人によれば、
「同室の友人も誘ったが、あいつ忙しいみたいだからな」
とのことだ。
というくらいだからあらかじめ計画があったわけではない。川辺に来たのもたまたまで、気の向くままに散策している。
なので、肉が焼ける匂いが蒼留人の鼻をとらえたのも偶然だった。
「なんだかいい匂いがしてきたな……」
歩いて行くと川原に三十人近い集団ができており、盛大にバーベキューを催しているのだと分かった。
「寝子島高校中心の顔ぶれですね」
「ますます気になる。花より団子だ」
さっきは『桜は日本の心』なんて言い切っていたのにもう心が揺れている――マーガレットは微笑ましく思った。
行っていいかとも訊かず、蒼留人が大股に近づいていくと、
「こんにちはー！」
久保田美和が気づいて手招きしてくれた。
「あ、先生？」
「バーベキューやってんの。よかったらおいでよ」
相原まゆも誘ってくれる。
「いいんですか？ マガレ、お相伴に預かろうぜ」
「バーベキューですか？」
まぁ、私はそれほどお腹は空いてないのですが――とマーガレットはためらいを口にしかけたものの、蒼留人は嬉しそうだし断る理由もないため、「そうしましょう」と応じることにした。
なんか匂いに釣られたみたいであれですけどね。
「お邪魔します」
いくらか遠慮ぎみに蒼留人は言う。
実際、参加してみると楽しくないはずがなかった。
顔見知りは何人かいたし、「どんどん食べてー！」とはりきるまゆ先生は愉快だし、なによりこういう、広々とした場所で大勢で食べることには解放感がある。
それに、
「では、いただきます。うん、うまいですね」
と言いながら勧められるまま、もりもりと肉を食べる蒼留人の姿は見ていて気持ちのいいものがあった。
いや、でも。
「それはそうと、響君……さっきからお肉しか食べてないように見えるのですが」
マーガレットは指摘する。牛肉手羽先スペアリブ、ソーセージにモツ類まで、さっきから蒼留人は肉しか口にしていない。
「少し野菜も食べた方がいいですよ。若いうちからそんなことだと大人になってから大変です」
「野菜か……そうだな」
露呈しては仕方がない。牛肉のやわらかさ、ジューシーな鶏皮、スペアリブのボリュームのある食べ心地、これらがバーベキューソースと一体となった景気のよさに魅了されっぱなしだったのだ。
少量のタマネギを、申し訳程度に皿に乗せる。
「そういやさっきまでふたりだったけど」
何気なく美和が話しかけてきた。蒼留人とマーガレットを眼で示して、
「ふたりはアレ？ つきあってるとか？」
この質問に対して照れたり躊躇したりしない。蒼留人は一秒も間を開けずきっぱりと回答した。
「いや、俺たちはそういうのではないです。同好会仲間です」
「同好会？ どこだっけ」
「ええと……」言いにくい。だからこう言い換える。「イギリスの文化を研究するという会で」
言えるはずないよな。
BL同好会だなんて！
もちろんボーイズラブ同好会ではない。正式名称は『ブリティッシュライフ同好会』である。BLこと英国生活を研究し鑑賞するためのクラブだ。BLの体験会も定期的に催している。
……いやだから、ボーイズラブではないのである！
マーガレットが蒼留人の皿に目を留めた。
野菜をとるようアドバイスしたのに、あんなに少しだなんて。
「その程度ではいけません。食生活はバランスが大事ですわ。さっ、このキャベツとカボチャを」
言うなりどっさり、トングで野菜を取り蒼留人の紙皿に盛った。
「これ生じゃ……」
「えっ、生？ 大丈夫ですよ、野菜ですから。どうしても肉というなら、野菜と肉が同時に取れるBL巻きにするといい感じですよ」
「BL巻きだと……まさか！」
「まさか、なんです？」
「い、いやなんでもない」
一瞬、恐ろしいものを想像してしまった。ブリティッシュライフではないほうのBLを、巻きで……。（※もちろんこのBLは『ベーコンレタス』の略である）
どうも不肖の姉の影響を受けすぎてるような――蒼留人は軽く頭を振った。
スカイブルーの半分を、桜の枝と花が占めている。
「桜か。日本の心だな」
「心、ですか。なるほど」
マーガレット・ライカーが応じた。
桜を心と言い切るストレートさも悪いものではない。咲いてもそのさかりは短く、散ってはまた翌年花を付ける。その姿、むずかしくいえば輪廻を、自分の生き様に重ねたくなる気持ちはマーガレットにも理解ができた。
蒼留人とマーガレットはふたり連れだ。といってもデートといった浮ついた話ではない。蒼留人によれば、
「同室の友人も誘ったが、あいつ忙しいみたいだからな」
とのことだ。
というくらいだからあらかじめ計画があったわけではない。川辺に来たのもたまたまで、気の向くままに散策している。
なので、肉が焼ける匂いが蒼留人の鼻をとらえたのも偶然だった。
「なんだかいい匂いがしてきたな……」
歩いて行くと川原に三十人近い集団ができており、盛大にバーベキューを催しているのだと分かった。
「寝子島高校中心の顔ぶれですね」
「ますます気になる。花より団子だ」
さっきは『桜は日本の心』なんて言い切っていたのにもう心が揺れている――マーガレットは微笑ましく思った。
行っていいかとも訊かず、蒼留人が大股に近づいていくと、
「こんにちはー！」
久保田美和が気づいて手招きしてくれた。
「あ、先生？」
「バーベキューやってんの。よかったらおいでよ」
相原まゆも誘ってくれる。
「いいんですか？ マガレ、お相伴に預かろうぜ」
「バーベキューですか？」
まぁ、私はそれほどお腹は空いてないのですが――とマーガレットはためらいを口にしかけたものの、蒼留人は嬉しそうだし断る理由もないため、「そうしましょう」と応じることにした。
なんか匂いに釣られたみたいであれですけどね。
「お邪魔します」
いくらか遠慮ぎみに蒼留人は言う。
実際、参加してみると楽しくないはずがなかった。
顔見知りは何人かいたし、「どんどん食べてー！」とはりきるまゆ先生は愉快だし、なによりこういう、広々とした場所で大勢で食べることには解放感がある。
それに、
「では、いただきます。うん、うまいですね」
と言いながら勧められるまま、もりもりと肉を食べる蒼留人の姿は見ていて気持ちのいいものがあった。
いや、でも。
「それはそうと、響君……さっきからお肉しか食べてないように見えるのですが」
マーガレットは指摘する。牛肉手羽先スペアリブ、ソーセージにモツ類まで、さっきから蒼留人は肉しか口にしていない。
「少し野菜も食べた方がいいですよ。若いうちからそんなことだと大人になってから大変です」
「野菜か……そうだな」
露呈しては仕方がない。牛肉のやわらかさ、ジューシーな鶏皮、スペアリブのボリュームのある食べ心地、これらがバーベキューソースと一体となった景気のよさに魅了されっぱなしだったのだ。
少量のタマネギを、申し訳程度に皿に乗せる。
「そういやさっきまでふたりだったけど」
何気なく美和が話しかけてきた。蒼留人とマーガレットを眼で示して、
「ふたりはアレ？ つきあってるとか？」
この質問に対して照れたり躊躇したりしない。蒼留人は一秒も間を開けずきっぱりと回答した。
「いや、俺たちはそういうのではないです。同好会仲間です」
「同好会？ どこだっけ」
「ええと……」言いにくい。だからこう言い換える。「イギリスの文化を研究するという会で」
言えるはずないよな。
BL同好会だなんて！
もちろんボーイズラブ同好会ではない。正式名称は『ブリティッシュライフ同好会』である。BLこと英国生活を研究し鑑賞するためのクラブだ。BLの体験会も定期的に催している。
……いやだから、ボーイズラブではないのである！
マーガレットが蒼留人の皿に目を留めた。
野菜をとるようアドバイスしたのに、あんなに少しだなんて。
「その程度ではいけません。食生活はバランスが大事ですわ。さっ、このキャベツとカボチャを」
言うなりどっさり、トングで野菜を取り蒼留人の紙皿に盛った。
「これ生じゃ……」
「えっ、生？ 大丈夫ですよ、野菜ですから。どうしても肉というなら、野菜と肉が同時に取れるBL巻きにするといい感じですよ」
「BL巻きだと……まさか！」
「まさか、なんです？」
「い、いやなんでもない」
一瞬、恐ろしいものを想像してしまった。ブリティッシュライフではないほうのBLを、巻きで……。（※もちろんこのBLは『ベーコンレタス』の略である）
どうも不肖の姉の影響を受けすぎてるような――蒼留人は軽く頭を振った。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年01月16日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年01月23日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年01月23日 11時00分
