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- 00月00日生 00歳
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【お花見】逢ひ見んことは命なりけり
海浜公園は大変な数の人でごった返していた。
けれども窮屈な気がしないのは、公園そのものの広さと余裕ある道幅のおかげだろうか。大樹の美しさに足を止めるのも自由、写真撮影に興じるのもじゅうぶんに可能だ。
姉妹は座れる場所をさがして、野外ステージ前に空きを見つけた。さすがにステージが近いだけあって混雑している。それでも、見晴らしのいい場所を確保できたのではないか。芝はやわらかで、敷物がなくたって座るのに困難はなさそうだ。
「ここはいかにもお花見って感じだよね！ 他のところでもいいけど」
蒼の右手が握っているのは、いましがた屋台で買ったばかりのチリドッグだった。油で輝きぷりぷりしていて、マスタードもケチャップも、ほぼ原色のビビッドさがある。
「『いかにも』なのがいいかもね」
紫も応じて腰を下ろす。
ぱっと見ではきっと、仙藤姉妹は姉妹に見えまい。紫と蒼の服装はまるでテイストが違っていたから。
紫の装いは大人っぽいブラウスにスカート、ヒールの立ったショートブーツ、色使いこそ春めいた桜色中心だったが、ぐっと落ち着いたトータルコーディネートだ。
対する蒼はスカイブルーのパーカーにデニムのショートパンツ、靴だって水色基調のスニーカーという組み合わせ、斜めにかぶったベースボールキャップも活発な印象である。
よく見れば顔つきに共通点はあるのだが、第一印象にしぼるならタイプのちがう友人同士と映るのではないか。
ステージでは飛び入り参加可能のパフォーマンス大会がひらかれている。今年もたくさんの腕自慢喉自慢があの場所に上がるのだろう。
去年の今ごろは、と紫は目を細めた。
二年前の夏に失恋で終わった恋の傷を引きずっていた。
痛みはまるで、胸に突き刺さったガラスの棘（トゲ）、永遠に消えないのではないかとすら思ったものだ。
だというのに今はもう、それが嘘のように消えている。
どんな悩みも心の痛みも、時間が解決するということなのだろうか。
それとも自分が、成長したということなのだろうか。
といっても傷が完全に消え去ったのは夏になってからのことだった。夏フェスの会場でようやく、私の恋は終わったと紫は知ったのである。
姉妹の隣には大学生くらいの男二人連れが腰を下ろしていた。男たちはステージを見るでもなく、なにやらヒソヒソと言葉をかわしていたがやがて、
「君たちふたり連れ？」
「お……俺たちもなんだけど」
と身を乗り出し紫と蒼に声をかけてきたのである。
またナンパ――！
紫はうんざりしている。花見でナンパに遭うのは二年連続だ。
それにしたって。
これはない、と蒼も溜息をついた。
去年の男たちについてはなにも覚えていないが、もうちょっと見た目は良かったように思う。彼らときたら……なんとかならなかったのかといった風貌だったのだ。ひとりは肥りすぎでふうふう言っているし、もうひとりはガリガリで頬がこけており、頭に白髪がいっぱいまじっている。そろって高そうな服を着ているが、下品な色使いでまったく似合っていなかった。
「悪いけど、今日はそんな気分じゃない」
「ごめんね」
蒼、紫はたて続けに告げて、あとは彼らを積極的に無視しようと努めた。
なのにこういうところだけガッツがあるのか、
「そんなこと言わずにさあ」
「なんか食べる？ 食べる」
細いのと太いのはあきらめずちょっかいをかけてくる。
ああもう！
去年のことを紫は思い出している。あのときは、蒼が衝撃的爆弾発言をしてナンパを断ったのだった。
「残念、私たち百合ップルでしたー！」
なおこのネタが気に入ったのか、妹は再度、昨年大晦日にＴＶの生中継でもやらかした。
「ここだけの秘密なんだけど……私とお姉ちゃんは愛し合う仲なんです！」
思い出すだけで顔から火が出そうになる。
しかし蒼にとっては一種の決めフレーズになった感もある。ということは、と紫が危惧するのも当然だ。
今回も同傾向の告白をするのでは……！？
手に汗握るも、そうはならなかった。
じゃあ、と蒼は二人組をにらむようにして立ち上がるとこう言ったのである。
「ステージでカラオケやってるから、そこで私たちより好評価を勝ち取ったら付き合ってあげてもいいよ！」
なんだ百合姉妹とか言わないのねそれはそれで寂しいような……じゃなくて。
慌てて紫も立ってしまう。
「ちょ、ちょっと蒼、何考えてるの！？」
「大丈夫だって」
蒼はくすっと笑った。
これで相手が怖じ気づけばよし、受けてたつとしても負けない自信はある。
男ふたりはまたヒソヒソと相談を開始した。この動作がいちいちムカつくと蒼は思う。尻尾を巻くかと思いきや、
「よし！ 負けないぞ！」
さっきまで気後れ気味だった太っちょのほうが、鼻息も荒くこう答えたのである。
けれども窮屈な気がしないのは、公園そのものの広さと余裕ある道幅のおかげだろうか。大樹の美しさに足を止めるのも自由、写真撮影に興じるのもじゅうぶんに可能だ。
姉妹は座れる場所をさがして、野外ステージ前に空きを見つけた。さすがにステージが近いだけあって混雑している。それでも、見晴らしのいい場所を確保できたのではないか。芝はやわらかで、敷物がなくたって座るのに困難はなさそうだ。
「ここはいかにもお花見って感じだよね！ 他のところでもいいけど」
蒼の右手が握っているのは、いましがた屋台で買ったばかりのチリドッグだった。油で輝きぷりぷりしていて、マスタードもケチャップも、ほぼ原色のビビッドさがある。
「『いかにも』なのがいいかもね」
紫も応じて腰を下ろす。
ぱっと見ではきっと、仙藤姉妹は姉妹に見えまい。紫と蒼の服装はまるでテイストが違っていたから。
紫の装いは大人っぽいブラウスにスカート、ヒールの立ったショートブーツ、色使いこそ春めいた桜色中心だったが、ぐっと落ち着いたトータルコーディネートだ。
対する蒼はスカイブルーのパーカーにデニムのショートパンツ、靴だって水色基調のスニーカーという組み合わせ、斜めにかぶったベースボールキャップも活発な印象である。
よく見れば顔つきに共通点はあるのだが、第一印象にしぼるならタイプのちがう友人同士と映るのではないか。
ステージでは飛び入り参加可能のパフォーマンス大会がひらかれている。今年もたくさんの腕自慢喉自慢があの場所に上がるのだろう。
去年の今ごろは、と紫は目を細めた。
二年前の夏に失恋で終わった恋の傷を引きずっていた。
痛みはまるで、胸に突き刺さったガラスの棘（トゲ）、永遠に消えないのではないかとすら思ったものだ。
だというのに今はもう、それが嘘のように消えている。
どんな悩みも心の痛みも、時間が解決するということなのだろうか。
それとも自分が、成長したということなのだろうか。
といっても傷が完全に消え去ったのは夏になってからのことだった。夏フェスの会場でようやく、私の恋は終わったと紫は知ったのである。
姉妹の隣には大学生くらいの男二人連れが腰を下ろしていた。男たちはステージを見るでもなく、なにやらヒソヒソと言葉をかわしていたがやがて、
「君たちふたり連れ？」
「お……俺たちもなんだけど」
と身を乗り出し紫と蒼に声をかけてきたのである。
またナンパ――！
紫はうんざりしている。花見でナンパに遭うのは二年連続だ。
それにしたって。
これはない、と蒼も溜息をついた。
去年の男たちについてはなにも覚えていないが、もうちょっと見た目は良かったように思う。彼らときたら……なんとかならなかったのかといった風貌だったのだ。ひとりは肥りすぎでふうふう言っているし、もうひとりはガリガリで頬がこけており、頭に白髪がいっぱいまじっている。そろって高そうな服を着ているが、下品な色使いでまったく似合っていなかった。
「悪いけど、今日はそんな気分じゃない」
「ごめんね」
蒼、紫はたて続けに告げて、あとは彼らを積極的に無視しようと努めた。
なのにこういうところだけガッツがあるのか、
「そんなこと言わずにさあ」
「なんか食べる？ 食べる」
細いのと太いのはあきらめずちょっかいをかけてくる。
ああもう！
去年のことを紫は思い出している。あのときは、蒼が衝撃的爆弾発言をしてナンパを断ったのだった。
「残念、私たち百合ップルでしたー！」
なおこのネタが気に入ったのか、妹は再度、昨年大晦日にＴＶの生中継でもやらかした。
「ここだけの秘密なんだけど……私とお姉ちゃんは愛し合う仲なんです！」
思い出すだけで顔から火が出そうになる。
しかし蒼にとっては一種の決めフレーズになった感もある。ということは、と紫が危惧するのも当然だ。
今回も同傾向の告白をするのでは……！？
手に汗握るも、そうはならなかった。
じゃあ、と蒼は二人組をにらむようにして立ち上がるとこう言ったのである。
「ステージでカラオケやってるから、そこで私たちより好評価を勝ち取ったら付き合ってあげてもいいよ！」
なんだ百合姉妹とか言わないのねそれはそれで寂しいような……じゃなくて。
慌てて紫も立ってしまう。
「ちょ、ちょっと蒼、何考えてるの！？」
「大丈夫だって」
蒼はくすっと笑った。
これで相手が怖じ気づけばよし、受けてたつとしても負けない自信はある。
男ふたりはまたヒソヒソと相談を開始した。この動作がいちいちムカつくと蒼は思う。尻尾を巻くかと思いきや、
「よし！ 負けないぞ！」
さっきまで気後れ気味だった太っちょのほうが、鼻息も荒くこう答えたのである。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年01月16日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年01月23日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年01月23日 11時00分
