夢をおとどけ、ふくびきや｜リアクション

夢をおとどけ、ふくびきや

　白真白はいつの間にか閉じていた目を開けた。
「白様、どうかされましたか？」
　目の前に膝をついた質素な鎧をつけた侍が一人。
「情報に寄りますので数刻後には敵軍が攻めて来るとのこと。指示をお願いします」
　真白は自分の格好と確認する。鎧と立派な兜をつけた武将になっていた。
「んー？」
　何故鎧をつけている不思議に思ったものの目覚める前の記憶では夢のふくびき屋でがらがらを回した。つまり、
「ここは夢の世界！？」
　楽しい夢を見せてくれるっていうのなら思いっきり楽しまないと。
「あの、白様？」
　部下らしき男に怪訝な顔をされてしまった。真白はこほんと咳払い。
「絶対にこの白を守るのよ！　投石弓矢の準備は？」
「は、いつでも」
　真白は顎に手を当てる。
「総攻撃を仕掛ける前に敵軍の気をそらしたいんだけど」
「はあ、気をそらすですか」
「ちょっと耳かして」
　ごにょごにょと作戦会議。

　それから間もなく、無数のたいまつの光が攻めてくるのが見えた。白の一番上で望遠鏡を覗く真白はにやりと笑った。
「よーし、うっちゃえー！」
　城の屋根からのろしが上がり、次の瞬間、一斉に黒い球が空へと打ち上げられた。
　夜空に色とりどりの花火が開いた。
「さあ、見惚れてるうちに準備！」
　敵軍に矢の雨が降り注ぐ。
「門は閉めた？」
「時間を稼いだおかげで鍵もかけられたとのことです」
「それじゃあ、まあ、そろそろ逆襲の時間だね！」
「出られるのですか？」
「当たり前だよ！」
　真白は薙刀を手に取った。
「大将の首、取ってくるから」
「お気をつけて」
　真白は薙刀をくるりと回して階段をひとっ飛び、廊下を一人独走する。
「いたぞ、白真白だ！」
　どうやら敵軍の兵士に見つかったらしい。
「ふふん、私に勝てるかな？　はあっ！」
　向かって来る兵士達の鎧を薙刀で突いて、ドミノ倒しのようにし、彼らの上を飛び越える。
　刀を弾き飛ばしたり、時には体術を駆使して、城の中庭へ。
「いた」
　敵軍兵士が固まっている。敵の大将だ。
「その首、頂戴いたす！　なんて、ねっ！」
　大きく振って一気に刀を弾き飛ばす。背後から切りかかって来る兵士には体勢を低くして、腹に肘を打ち込む。
「がはっ」
　倒れた兵士を踏み台に大将に飛び掛かる。
「ひいっ」
　悲鳴を上げる敵大将、真白は薙刀を一振りして一つ結びの髪を切り落とす。
「に、逃げろー」
　落ち武者のようになった大将は部下を連れ、情けなく逃げて行った。
「敵軍の大将、取ったり―！」
　結髪を空高く掲げる。
　そこで視界が暗転し、気づけば寝子島に立っていた。

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