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ンモ～っ♪ 新春☆初夢フェア２０２１！ ～茄子編～
クリーム色したカーテンが、ふわり、柔らかな風に煽られ優しい弧を空中に描く。
窓辺に置かれた布張りの人台の肩を撫で、実習台の端の蛇口で滴となった水を小さく揺らした風は、黒髪を結った青いリボンをふわりとなびかせる。
うつむいた頬に触れる風に、宮祀 智瑜は夜色の優しい瞳を瞬かせた。唇に触れる髪を耳に掛け、被服室のスツールに掛けて揃えた制服の膝に預かったズボンを広げる。
「……その、」
ズボンの持ち主である数学教師の桐島 義弘先生は、作業台の向かいに座ってどこか落ちつかぬ風に眼鏡の位置を直している。
「いつも済まない、宮祀」
「いいんですよ、義弘先生」
お尻の部分、ものの見事にびりりと破けた裂け目を確かめつつ、智瑜は作業台に置いた裁縫セットを手に取った。手慣れた仕草で針に糸を通し、ズボンを裏返す。
「寒くないですか」
「……問題ない」
スーツ姿の上半身の下には、今は被服室で借りたバスタオルを巻いている。いつもは厳しいまなざしをしていることの多い先生は、その格好をしているときばかりはなんだかとても情けないような気恥ずかしいような表情をする。
(……特権、ですね)
こちらから目を逸らし、窓の外を眺めやる先生の照れたような横顔をちらりと盗み見て、智瑜はそっと唇を綻ばせた。何故だかお尻が破けてしまうことの多い、そのくせ自分ではそのことに気づけない先生の惨状に気づくのも、そのズボンの補修をするのも、ここのところの智瑜の専売特許のようなもの。
(それだけ先生のことを見ているという、こと……)
ふと思った自分の言葉に自分で照れて、智瑜は知らず頬を赤らめた。
「宮祀？ どうかしたか」
難しい顔をつくって窓の外を眺めていた先生に声を掛けられ、慌てて首を横に振る。ズボンのお尻の補修に取り掛かる。
(サイズが合っていないわけではなさそうだから、)
今、先生の顔を見てしまえばますます顔が赤くなってしまう気がした。慣れた手で針を進めながら、だから大真面目に考えてみる。
(屈んだりしたときに破けてしまうってことは、たぶん、)
太腿の筋肉がしっかりしているということかな、と衣服のつくりと人体の構造について考えていて、結局先生の太腿に辿り着いてしまった。
(っ、……)
バスタオルで隠すときに偶然見てしまった先生の素足が思い浮かんで、途轍もなく動揺する。それでも運針は乱れず、ミシンで縫ったかのような規則正しい糸の並びを作って行く。
「宮祀」
「はっ、はい！」
不意に声を掛けられドキリと顔を上げると、先生は生真面目な眼に気づかわしげな色を浮かべてこちらを見つめていた。
「済まない」
真摯な声で先生は繰り返す。
「本当は、生徒にしてもらうようなことではないのかもしれない」
セクハラだろうかと悩む先生に、智瑜は首を大きく横に振る。どんな些細なことも真剣に悩んで、生徒みんなに公平であろうとする先生の考え方はとても好感の抱けるものではあるけれど、
「これは私がしたくてしてることです！」
先生にとっては望まぬハプニングの末であろうとも、智瑜にとって先生とのこの時間は、大好きなひととふたりきりになれることもある大切な時間。
思わず口から出てしまった自分の大きな声に狼狽え、智瑜は掌で唇を抑える。頬どころか、唇まで熱を帯びている気がした。
「だから、あの、……義弘先生」
真っ赤な頬も照れすぎて潤んでしまった瞳も、咳払いひとつで誤魔化そうとしてしまいながら、智瑜は糸をきちんと縫い留める。
「これからも先生のズボンを縫わせてください」
なるべく普通に、なんでもないように言ったつもりで、言葉にしてから気が付いた。これはちょっと、もしかしたら聞きようによってはプロポーズじみて聞こえたりしてしまわないだろうか。
気づいて言い直そうとして、どこをどう言い直せばいいのか分からなくなった。ひとことも発せずに口を閉ざす。だって、その言葉には一抹の嘘もない。
(これからも、ずっと、……)
そこから先を口にすれば、先生は困ってしまうだろうか。それとも、大人の余裕で笑われてしまうのだろうか。
迷っていても、それでも手だけは寸分の狂いなく動く。裏返していたズボンを表に返し、縫い目が目立たないか確かめる。窓辺の棚に置かれていたアイロンとアイロン台を使い、皺ひとつなく仕上げる。
「はい、出来ました」
ピンと元通りの姿を取り戻したズボンをことさらに得意げに先生へと差し出してみせれば、先生はなんだか安堵した表情を見せてくれた。
「ありがとう、宮祀」
その表情はズボンが元に戻ったためなのか、それとも別の理由のためなのかは分からないまま、智瑜はいつもように朗らかに笑う。
(大好きです、義弘先生！)
あたたかく膨らむ先生への想いを、今は自分の胸にだけ抱きしめて。
窓辺に置かれた布張りの人台の肩を撫で、実習台の端の蛇口で滴となった水を小さく揺らした風は、黒髪を結った青いリボンをふわりとなびかせる。
うつむいた頬に触れる風に、宮祀 智瑜は夜色の優しい瞳を瞬かせた。唇に触れる髪を耳に掛け、被服室のスツールに掛けて揃えた制服の膝に預かったズボンを広げる。
「……その、」
ズボンの持ち主である数学教師の桐島 義弘先生は、作業台の向かいに座ってどこか落ちつかぬ風に眼鏡の位置を直している。
「いつも済まない、宮祀」
「いいんですよ、義弘先生」
お尻の部分、ものの見事にびりりと破けた裂け目を確かめつつ、智瑜は作業台に置いた裁縫セットを手に取った。手慣れた仕草で針に糸を通し、ズボンを裏返す。
「寒くないですか」
「……問題ない」
スーツ姿の上半身の下には、今は被服室で借りたバスタオルを巻いている。いつもは厳しいまなざしをしていることの多い先生は、その格好をしているときばかりはなんだかとても情けないような気恥ずかしいような表情をする。
(……特権、ですね)
こちらから目を逸らし、窓の外を眺めやる先生の照れたような横顔をちらりと盗み見て、智瑜はそっと唇を綻ばせた。何故だかお尻が破けてしまうことの多い、そのくせ自分ではそのことに気づけない先生の惨状に気づくのも、そのズボンの補修をするのも、ここのところの智瑜の専売特許のようなもの。
(それだけ先生のことを見ているという、こと……)
ふと思った自分の言葉に自分で照れて、智瑜は知らず頬を赤らめた。
「宮祀？ どうかしたか」
難しい顔をつくって窓の外を眺めていた先生に声を掛けられ、慌てて首を横に振る。ズボンのお尻の補修に取り掛かる。
(サイズが合っていないわけではなさそうだから、)
今、先生の顔を見てしまえばますます顔が赤くなってしまう気がした。慣れた手で針を進めながら、だから大真面目に考えてみる。
(屈んだりしたときに破けてしまうってことは、たぶん、)
太腿の筋肉がしっかりしているということかな、と衣服のつくりと人体の構造について考えていて、結局先生の太腿に辿り着いてしまった。
(っ、……)
バスタオルで隠すときに偶然見てしまった先生の素足が思い浮かんで、途轍もなく動揺する。それでも運針は乱れず、ミシンで縫ったかのような規則正しい糸の並びを作って行く。
「宮祀」
「はっ、はい！」
不意に声を掛けられドキリと顔を上げると、先生は生真面目な眼に気づかわしげな色を浮かべてこちらを見つめていた。
「済まない」
真摯な声で先生は繰り返す。
「本当は、生徒にしてもらうようなことではないのかもしれない」
セクハラだろうかと悩む先生に、智瑜は首を大きく横に振る。どんな些細なことも真剣に悩んで、生徒みんなに公平であろうとする先生の考え方はとても好感の抱けるものではあるけれど、
「これは私がしたくてしてることです！」
先生にとっては望まぬハプニングの末であろうとも、智瑜にとって先生とのこの時間は、大好きなひととふたりきりになれることもある大切な時間。
思わず口から出てしまった自分の大きな声に狼狽え、智瑜は掌で唇を抑える。頬どころか、唇まで熱を帯びている気がした。
「だから、あの、……義弘先生」
真っ赤な頬も照れすぎて潤んでしまった瞳も、咳払いひとつで誤魔化そうとしてしまいながら、智瑜は糸をきちんと縫い留める。
「これからも先生のズボンを縫わせてください」
なるべく普通に、なんでもないように言ったつもりで、言葉にしてから気が付いた。これはちょっと、もしかしたら聞きようによってはプロポーズじみて聞こえたりしてしまわないだろうか。
気づいて言い直そうとして、どこをどう言い直せばいいのか分からなくなった。ひとことも発せずに口を閉ざす。だって、その言葉には一抹の嘘もない。
(これからも、ずっと、……)
そこから先を口にすれば、先生は困ってしまうだろうか。それとも、大人の余裕で笑われてしまうのだろうか。
迷っていても、それでも手だけは寸分の狂いなく動く。裏返していたズボンを表に返し、縫い目が目立たないか確かめる。窓辺の棚に置かれていたアイロンとアイロン台を使い、皺ひとつなく仕上げる。
「はい、出来ました」
ピンと元通りの姿を取り戻したズボンをことさらに得意げに先生へと差し出してみせれば、先生はなんだか安堵した表情を見せてくれた。
「ありがとう、宮祀」
その表情はズボンが元に戻ったためなのか、それとも別の理由のためなのかは分からないまま、智瑜はいつもように朗らかに笑う。
(大好きです、義弘先生！)
あたたかく膨らむ先生への想いを、今は自分の胸にだけ抱きしめて。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年01月03日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年01月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年01月10日 11時00分
