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ンモ～っ♪ 新春☆初夢フェア２０２１！ ～茄子編～
ひかり。
まっしろで、視界の何もかもをまぶしい色に染め上げて、けれど眼を貫くような烈しさはなく、むしろどこか優しい、──ひかり。
「わ、」
光の中に見えたのは、ばたばたと大きくなびいて翻るフリルつきの黄色いスカート。
「わわ、」
髪が逆立つ、風にあおられた服が肌に貼り付く。靴の踵にも爪先にも、触れているはずの地面に触れない。
「わわわ？！」
手足をばたばたさせてみても、触れるのは何にもない宙ばかり。
落ちている。どことも分からない真っ白な光の中を、まっすぐに落ちている。そう理解した途端、
「にょえええええぇぇえ？！」
悲鳴が口からついて出た。渾身の悲鳴も、あっと言う間に空の彼方。
「おちてるー！」
宇宙飛行士になりたかった。空を飛んでみたかった。でもひたすらに落っこちるのは想定外で、
「おーちーてーるー！」
どれだけ落ちても落ちても地面が見えないのも想定外で、
「ううん地面は見えなくていいんだっけ？ いいんだよねいいんだけどー？！」
落ちる体はいつまで経っても落ちていく。風がびゅるびゅる身体に巻き付く。せめて広げた腕も足も風の勢いに思い通りにならずにあっちこっちに翻弄される。落ちる。落ちる。落ちて落ちて、落ち続ける。
空のてっぺんから落っこちたってこんなに長くは落ち続けたりしないんじゃないかなきっと、と天馬 ひびきが思い始めたそのとき。
落ちてきたはずの上の光を仰いだ視界の中、光にばかり埋められる眼の中に、白よりも白いナニカを見た。
「んんー？」
目を凝らす。視界にばたばた暴れる自分の灰色の髪を両手でよいしょと押さえつけ、ぎゅーっと目に力を籠める。
光の空のずっと上のほうから、白くて小さな翼を羽ばたかせ、灰青色の蹄を懸命に動かして、小さなナニカが駆け下りてくる。落ちるひびきに追い付こうと空を飛んでくるそれは、
「はやぶさ！」
可愛いものが大好きなひびきのいちばんのお気に入りでいつも鞄に入れて持ち歩いては何かある度に話しかけているペガサスのぬいぐるみ。
「うきゃーっはやぶさー！」
顔中を笑顔にしてひびきが広げた両腕の中に、ぬいぐるみのはやぶさはもふーっと飛び込んで来た。その勢いで落下の速度が増したような気もするけれど、
「はやぶさはやぶさー！」
ひびきは気にしない。それよりも大好きなはやぶさが来てくれたことの方がずっとずっと大事。
エメラルドの瞳をきらきらと輝かせ、はやぶさはひびきの胸にふかふかのたてがみの頭をふかふかと擦りつけた。そうしてひびきの腰に全身で抱き着き、小さな翼をぱたぱたと羽ばたかせる。
ぱたぱた、ぱたぱた。小さな翼の起こす小さな風がひびきの頬を優しく撫でるも、落下速度がこころもち、ほんのちょこっと、微々たる程度に遅くなった気がするようなしないような。
「おーちーてーるー！」
はやぶさを両手でぎゅっと抱きしめ、ひびきは叫ぶ。叫ぶけれどそんなに怖くないのは、きっとはやぶさが一緒だからだ。それから地面が光に包まれたままで見えないからだ。
「どこまで落ちるのかなぁ」
落ち続けることに少し慣れて、落ちた先に何があるのか見てみたくなった。おでこに手をあて、ひさしを作る。周りぜんぶぐるっと埋める光をどうにか遮って、光の中にあるかもしれないナニカを見てみようとする。
「うーんっとー、」
見晴るかしてみれば、柔らかな白い光の中にナニカが見えた。光を浴びて光よりも優しくふんわりと光る、大きな大きなナニカ。碧い湖の色した瞳で、遠い空を仰ぐようにつんと尖った鼻先を斜め上に向けて、ニャンと笑ったような口のかたちした川のある、
「はやぶさ、あれなあに？ 見たことあるようなーないようなーなにあれなにあれーっ？」
こくりと首を傾げるひびきに、胸元のはやぶさが早く思い出してと言いたげにもふもふとたてがみの頭を打ち付ける。
「あっ」
もふっ、とはやぶさのたてがみ攻撃を顎に受けて、ひびきは黒い瞳を見開いた。どこかで見たと思うはずだ、
「寝子島！」
お散歩の途中の寝子島駅前の観光案内板で、シーサイドタウン駅前で配っていたパンフレットで、あとついでに学校の地図帳で、あちこちで毎日のように目にしてきた。
「寝子島だねぇ、はやぶさ！」
きゃあ、と笑ったその途端、ふわり、落ちる体の速度が和らいだ。ふわふわふわり、風船のように浮かぶ自分の身体が楽しくて、ひびきはもっと笑顔になる。
ふわりふわり、大好きな寝子島がゆっくりと近くなる。身体を包み込んでいた優しい光がゆらゆらと揺れる。ここまで一緒に来てくれた、寝子島へと届けてくれた光がサヨナラと笑った気がして、ひびきはひらりと手を振った。
「うん、またね！ 楽しい夢、ありがと！」
口にしてからひびきははたと気が付いた。そっか、夢。これは夢だったんだ。
ぴかぴか光りながら身体の周りを離れていく光に手を振り、ひびきは眼下に見える寝子島に大きな声で呼びかける。
「やっほー！ ただいまー！」
まっしろで、視界の何もかもをまぶしい色に染め上げて、けれど眼を貫くような烈しさはなく、むしろどこか優しい、──ひかり。
「わ、」
光の中に見えたのは、ばたばたと大きくなびいて翻るフリルつきの黄色いスカート。
「わわ、」
髪が逆立つ、風にあおられた服が肌に貼り付く。靴の踵にも爪先にも、触れているはずの地面に触れない。
「わわわ？！」
手足をばたばたさせてみても、触れるのは何にもない宙ばかり。
落ちている。どことも分からない真っ白な光の中を、まっすぐに落ちている。そう理解した途端、
「にょえええええぇぇえ？！」
悲鳴が口からついて出た。渾身の悲鳴も、あっと言う間に空の彼方。
「おちてるー！」
宇宙飛行士になりたかった。空を飛んでみたかった。でもひたすらに落っこちるのは想定外で、
「おーちーてーるー！」
どれだけ落ちても落ちても地面が見えないのも想定外で、
「ううん地面は見えなくていいんだっけ？ いいんだよねいいんだけどー？！」
落ちる体はいつまで経っても落ちていく。風がびゅるびゅる身体に巻き付く。せめて広げた腕も足も風の勢いに思い通りにならずにあっちこっちに翻弄される。落ちる。落ちる。落ちて落ちて、落ち続ける。
空のてっぺんから落っこちたってこんなに長くは落ち続けたりしないんじゃないかなきっと、と天馬 ひびきが思い始めたそのとき。
落ちてきたはずの上の光を仰いだ視界の中、光にばかり埋められる眼の中に、白よりも白いナニカを見た。
「んんー？」
目を凝らす。視界にばたばた暴れる自分の灰色の髪を両手でよいしょと押さえつけ、ぎゅーっと目に力を籠める。
光の空のずっと上のほうから、白くて小さな翼を羽ばたかせ、灰青色の蹄を懸命に動かして、小さなナニカが駆け下りてくる。落ちるひびきに追い付こうと空を飛んでくるそれは、
「はやぶさ！」
可愛いものが大好きなひびきのいちばんのお気に入りでいつも鞄に入れて持ち歩いては何かある度に話しかけているペガサスのぬいぐるみ。
「うきゃーっはやぶさー！」
顔中を笑顔にしてひびきが広げた両腕の中に、ぬいぐるみのはやぶさはもふーっと飛び込んで来た。その勢いで落下の速度が増したような気もするけれど、
「はやぶさはやぶさー！」
ひびきは気にしない。それよりも大好きなはやぶさが来てくれたことの方がずっとずっと大事。
エメラルドの瞳をきらきらと輝かせ、はやぶさはひびきの胸にふかふかのたてがみの頭をふかふかと擦りつけた。そうしてひびきの腰に全身で抱き着き、小さな翼をぱたぱたと羽ばたかせる。
ぱたぱた、ぱたぱた。小さな翼の起こす小さな風がひびきの頬を優しく撫でるも、落下速度がこころもち、ほんのちょこっと、微々たる程度に遅くなった気がするようなしないような。
「おーちーてーるー！」
はやぶさを両手でぎゅっと抱きしめ、ひびきは叫ぶ。叫ぶけれどそんなに怖くないのは、きっとはやぶさが一緒だからだ。それから地面が光に包まれたままで見えないからだ。
「どこまで落ちるのかなぁ」
落ち続けることに少し慣れて、落ちた先に何があるのか見てみたくなった。おでこに手をあて、ひさしを作る。周りぜんぶぐるっと埋める光をどうにか遮って、光の中にあるかもしれないナニカを見てみようとする。
「うーんっとー、」
見晴るかしてみれば、柔らかな白い光の中にナニカが見えた。光を浴びて光よりも優しくふんわりと光る、大きな大きなナニカ。碧い湖の色した瞳で、遠い空を仰ぐようにつんと尖った鼻先を斜め上に向けて、ニャンと笑ったような口のかたちした川のある、
「はやぶさ、あれなあに？ 見たことあるようなーないようなーなにあれなにあれーっ？」
こくりと首を傾げるひびきに、胸元のはやぶさが早く思い出してと言いたげにもふもふとたてがみの頭を打ち付ける。
「あっ」
もふっ、とはやぶさのたてがみ攻撃を顎に受けて、ひびきは黒い瞳を見開いた。どこかで見たと思うはずだ、
「寝子島！」
お散歩の途中の寝子島駅前の観光案内板で、シーサイドタウン駅前で配っていたパンフレットで、あとついでに学校の地図帳で、あちこちで毎日のように目にしてきた。
「寝子島だねぇ、はやぶさ！」
きゃあ、と笑ったその途端、ふわり、落ちる体の速度が和らいだ。ふわふわふわり、風船のように浮かぶ自分の身体が楽しくて、ひびきはもっと笑顔になる。
ふわりふわり、大好きな寝子島がゆっくりと近くなる。身体を包み込んでいた優しい光がゆらゆらと揺れる。ここまで一緒に来てくれた、寝子島へと届けてくれた光がサヨナラと笑った気がして、ひびきはひらりと手を振った。
「うん、またね！ 楽しい夢、ありがと！」
口にしてからひびきははたと気が付いた。そっか、夢。これは夢だったんだ。
ぴかぴか光りながら身体の周りを離れていく光に手を振り、ひびきは眼下に見える寝子島に大きな声で呼びかける。
「やっほー！ ただいまー！」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年01月03日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年01月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年01月10日 11時00分
