みんな、VMewberだよ！｜リアクション

みんな、VMewberだよ！

#歌ってみよう #○○やってみよう

　落合まゆらは、寝子島アニメーション学院声優科に通う声優の卵である。
　Vmewberとなった彼女は、心のバイブルでもある『魔法少女ミスティックアリア』テイストの衣装に、大きなリボンで結ったツインテールで、画面の中で可愛らしくウィンクしていた。
　配信のオープニングはもちろん「魔法少女ミスティックアリア」のＯＰ曲だ。毎朝早起きして寝子ヶ浜海岸でボイストレーニングしているだけあって、声の安定感は抜群！　ノリのよいメロディに乗せたのびやかでポップな歌声で、視聴者の心をのっけから鷲掴みである。
「これは何度歌っても燃えるよね！　え？　魔法少女なのに燃えるって？」
　ＭＣの合間にコメントを拾ってゆく。
「いいの。だって魔法少女の割に格闘得意なんだから！」
　まゆらが実際に必殺技を決めてみせると、カメラがそのモーションを拾って、画面内のキャラが派手な演出付きでアクションする。するとハートの雨が大量に振って来て、コメント欄も拍手喝采おひねりの嵐だ。
「アニソンや特撮ソングは得意なのよね。リクエストがあったら歌っちゃおうかな！　もちろん懐メロやＪ－ＰＯＰでもいいわよ」
　そう呼びかけると視聴者から何曲かリクエストがあり、まゆらは振りつけやダンスつきで歌って、いずれも高評価を得た。

　数曲歌っていい感じに視聴者数が上がってきたところで、ちょっと趣向を変えることにする。
「お次は『#○○やってみよう』のコーナー行きます！　何をしようかなーと思ったんですが、ここは得意なイラストを披露させていただこうかと！」
　視聴者から三つお題を貰って、それをまゆらが描いてみる、というわけだ。
　様々なお題が寄せられる中、まゆらが選んだのは「妖精」「銃」「ハッピー」の３つであった。
　この３つのお題を混ぜて一つの絵にするのだから、難易度はまあまあ高めである。
「んー、どうしよっかな。トリガーハッピーなフェアリー、って感じがいいかな」
　本来の絵柄は綺麗系であるが、可愛い系の絵も描ける。
　一番難しいのは銃であったが、そこをリアルに描けるのは強みであった。銃以外を可愛い系で統一して、リアルな銃を持った元気いっぱいの妖精の女の子を描き上げる。
「……こんな感じかな？」
　仕上がったイラストがかなりのハイクオリティであったため、視聴者たちは驚いた。可愛くて歌の上手い女の子であれもこれも出来すぎなんてことはないだろう、得意といいつつ絵くらいは某歌のお姉さん並みに壊滅的なのでは、と予想していたのがいい意味で裏切られたかたちである。
「高評価ありがとう！　嬉しいな！」
　そろそろ配信者のちょっとしたプライベート情報を知りたくなってきているころだろう。ラジオの仕事を受けたつもりで、ここで軽く雑談を挟む。
「この前声優として初仕事があってね――と言ってもクレジットにも出ないガヤなんだけど、あたしけっこう緊張しちゃって。でも終わったあとヒロイン役の方に声を掛けていただいてね……『堂々と声を出していてとても良かった』って仰っていただいたのが、すっごく励みになりました。これからますます頑張るので応援してね！」
　応援するよー、頑張ってーとたくさんのコメント。
　――気づけばまゆらも出口のない部屋からの脱出をなし遂げていた。

「けっこう快感だったかも。……本気でVmewber始めちゃおうかな」

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