みんな、VMewberだよ！｜リアクション

みんな、VMewberだよ！

　昨今、世界的に人気の動画配信サービス、Mewtube（ミューチューブ）。
　Mewtubeで動画を配信する者をMewtuber（ミューチューバ―）と呼ぶが、Mewtuberの中でも現実世界の本人ではなく、３Ｄグラフィックスなどによるバーチャルなアバターを介して配信する者を、バーチャルMewtuber、略して『VMewber』と呼ぶ。

　そしてこれは、神魂のせいなのであろう。
　気づくと彼らはそれぞれに、２メートル四方のキューブ状の空間に閉じ込められていた。
　出口はない。
　あるものは、目玉のような形のＷＥＢカメラが乗った２７インチの大きなモニターとヘッドセット、高性能ゲーミングＰＣ、古今東西のゲームとハードの数々。スナック菓子やらカップ麺などの食料、飲み物が入った小型冷蔵庫、シャワーにトイレ。……うん、いろいろある。人によっては、もうこの部屋から一生出なくてもいいという者もいるのでは、と思われる至れり尽くせりぶりだ。
　そんな奇妙な部屋でもっともインパクトがあるのは、モニターに浮かぶ文字であろう。

　『Vmewberとして視聴者数１００，０００人突破しないと出られない部屋』

　そう。ここはネット上で人気テーマのひとつである『〇〇しないと出られない部屋』の世界であるらしい。
　気づけば目玉めいたＷＥＢカメラがこちらの姿を捉えている。
　薄気味悪く思い手を伸ばすと、画面の中のキャラクターがまるで鏡合わせのように手を伸ばしてくる。
　画面の中のその人物は、手を振れば同じように手を振り、ステップを踏めば同じようにステップを踏む。
　だんだんわかって来た。
　このキャラクターこそが『VMewber』で、自分は何らかのパフォーマンスをして配信を行い、視聴者数１０万人を獲得しなければならないだろう。逆に言えば、達成できれば部屋から出ることができるというわけだ。
　困難かもしれないが、無理ではない。
　世の中には何百万という視聴者数を稼ぐVMewberも存在しているのだから。
　ヘッドセットに手を伸ばす。
　仕方がない。
　VMewberデビュー、してやろうじゃないか。

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