深草物語｜リアクション

深草物語

同じ頃、紫は写真に映っていた喫茶店を探そうとしていた。
古い写真を手掛かりにはしているが、数十年前に撮られているものなので店が閉店していたり、改装していてもおかしくはないと紫は考えていた。

(昔からやっていそうなお店で聞き込みをした方が良いわね)

商店街には古くからやっている店もあれば最近商売を始めた店も多い。
オープンしたばかりのような新しい商店を避けて、年季の入った店を探していると骨董品と書かれた店を見つけた。

「こんにちはー」

声を掛けながら、店に入るとそこには壺や花瓶等の骨董品が置かれている。

「はいはい。いらっしゃい」
奥から、店の主人らしき男性がにこやかに挨拶をしながら紫に寄ってきた。

「お忙しい所すみません。お尋ねしたい事がありまして」
「ほうほう。なにかな？」
「この写真に映っている喫茶店をご存知ないですか？」

紫は写真を見せながら、男性に尋ねる。

「随分古い写真だねぇ。うーん、これは『積恋』さんかなぁ？」
「せきこい？」
聞きなれない店名に紫は聞き返してしまう。

「そう。積もる恋と書いてせきこいって読むんだ」
「そのまま、つもるこいではないんですね。―――このお店は現在も営業されていますか？」
「うん。改装して昔のままではないけどね、今でもやっているよ」

（良かった！やっているなら心春さんの事を覚えている人がいるかもしれないわね！）

紫は『積恋』の場所を男性から聞き、お礼を言って喫茶店に向かった。

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