俺達の旅立ち｜リアクション

俺達の旅立ち

【スイーツ】

　知らず知らずの内に周囲に元気を与えた彼らが次に向かったのは、レースの時に立ち寄った茶屋『紗之香』だ。「……俺は大人の階段を上る！」と激辛饅頭を意を決して口にした正也がやっぱり撃沈したので、元気づけてやろうと彼が好物のスイーツを食べに来たのだ。

「はあ～、やっぱここの抹茶ソフト白玉あんみつは美味いな~。毎日食べたくなっちゃうんだよ、ほんと！」
　運ばれてきたあんみつを１口食べ、正也が頬を押さえ幸せそうに目尻を下げた。
「分かりやすく幸せだな……」
　煉と武道も思い思いのスイーツを頼んでいる。美味しそうに食べる正也を見ると、スイーツが一層美味しくなるのはなぜだろう。煉と武道は顔を見合わせくすりと笑うと、運ばれてきた香り豊かなお茶にほっと一息ついた。

「甘い物っていえば、俺の誕生日に行った『sominium』のケーキも美味かったな」
　和菓子を堪能しゆっくりとお茶を飲む煉の言葉に、武道も頷いた。
「確かに甘さ控えめなのに美味しかった！　あそこもきりのんのオススメだもんね☆」
　２人の言葉にえへんと正也が鼻の下を擦った。
「スイーツは得意分野だからな！　あの時は煉にばれないかドキドキしたけど、サプライズは大成功だったぜ！」
「きりのん、態度に出そうになってひやひやしたよ」
「俺はメイドカチューシャの件を忘れてないぞ……まあ、でも嬉しかったよ。あの時はありがとな」
　少し照れたような煉の声に武道と正也は顔を見合わせ……テヘペロ。そのままの表情で正也がうんうんと頷いた。

「サプライズなら武道の時も大成功だった！」
「あー、れんちゃんのお部屋で祝ってくれたやつ！　あの時のお料理もケーキも、とっても美味しかった！」
「準備頑張ったから、そう言って貰えると嬉しいよ」
「そうそう、俺も頑張ったんだぜ！　でもあの時の煉が１番怖かったなー。準備してる時、俺めっちゃ怒られたもん。まあ、なんとなくで料理やってた俺も俺だけどさ！」
「その何となくを修正するのにどれだけ手間がかかったか……。また激辛麻婆豆腐を食べさせたくなってきた」
　当時の怖ささながらに、煉の空気がシンと冷える。
「……ひいっ！　煉さんご勘弁！」
「あ、俺また食べたーい！　あの麻婆豆腐、めっちゃ美味しかったもん☆」
　青くなる正也にハイハイと元気に手を挙げる武道。楽しい事が大好きな３人ならではの、お互いのハッピーバースデー。祝い、祝われた思い出に話は尽きない。