ダンシング・ソード｜リアクション

ダンシング・ソード

　――旧市街の、とある喫茶店。
　昼下がりにも関わらず相変わらず客が居ない店内。
　BGMに流しているジャズの中、新聞が広げられる音が響いた。
「……で、結局は、だ」
「はイ」
　煙草を口に咥えて、眉間に皺を寄せていた高津戸が、やや続きを渋る。
　だがやがて、小さく息を吐くと、新聞を畳んだ。
「星が丘で起きていた傷害事件は善良な市民Tさんの協力の甲斐あって、無事解決しました……とさ、めでたしめでたし」
　寿井知が、小首を傾げて瞬きの回数を増やす。
「……Tサン？」
　高津戸が胸元を指で指し示す。
　はて、とさらに首を傾けて、寿井知は両方のこめかみに指を掛ける。
「お話によると……あの日、高津戸サンは気絶しテ、ここに運ばれテ」
「…………」
　高津戸が苦々しい表情を浮かべるのを見て、寿井知が小さな手で、小さな口を抑えた。
「あ……お店の宣伝ハ？」
「気絶してる間に犯人が捕まってたのを目ぇ覚ましてから運んだだけだからな……お前そりゃあ」
「胸張ってたら、格好悪イですネ」
　高津戸が半眼で寿井知を睨み、煙草を一息に吸い込む。
　だらしなく開けた口元から吐き出される煙の向こう側。
　テレビでは今日もニュースが流れている。

「……続きましては、星が丘連続傷害事件の続報です。逮捕された少年は依然として犯行に関して黙秘を続けており、事件の真相解明には未だ明確な情報が提示されていない模様です。引き続き、取り調べを続行すると……」

「結局、何だったんだろうな、アイツ」
　高津戸は定まらない視線でテレビを見ながら、独り言ちた。
　目の前に居る人間ではない小さなヒト。
　姿の見えない少年、少女。
　身の回りに起きるフツウではない事柄に、思いを馳せる。
「ぁ」寿井知が小さく、何かを思いついたように声を出す。「高津戸サン」
「……ん」
　短くなった煙草を揉み消し、高津戸が続きを促す。
「見えないヒト、捕まえておくのっテ、大丈夫なんですかネ」
「大丈夫って……何が」
「例えバ、消えテ、居なくなっちゃったリ……とカ」
　寿井知の言葉に、ふむ、と小さく鼻を鳴らして高津戸が腕を組んだ。
「ま……そん時はそん時……また『コイツ』に頼むよ、なかなかどうして、凄ぇみたいだからな」
　苦笑しながら――高津戸は、カウンターに広げたままにされたポスターを指で叩いた。

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あとがき

担当マスター：歌留多
ファンレターはマスターページから！

　歌留多です。
　ご参加いただいた皆様。
　また、ここまでお読みくださった皆様、ありがとうございます。

　まず、リアクションが大きく遅れたこと、お詫び申し上げます。
　偏に私個人のミスです。申し訳ございません。
　今後はこのようなことが無いように致します。

　肝心のリアクションですが、
　手段や、それに絡むアイデアなど、様々なアクションが絡んだ結果です。
　その時、その瞬間。その後。
　どのタイミングから見ても、捉え方が広い最後となったのではないでしょうか。
　切に、お楽しみ頂けましたら幸いです。

　また、いつか皆様とお会いできたら、と思います。
　それでは。

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