決戦絶神！分かれ合わさる運命、絶望、未来｜リアクション

決戦絶神！分かれ合わさる運命、絶望、未来

●眠りと目覚め――或いは死と生のワルツ

　ゆらゆらと、水の中に漂っているような気がした。
　なんだかあったかくって、お母さんのおなかの中ってこんな感じなのかなって思ったりする。
　私はこれから生まれようとしているのかな。それとも死んじゃったのかな。
　そんなことを取りとめもなく考える。

「野々さん！　“これ”は野々さんが見てる“夢”なんだよ。ほら、ご覧の通り僕が２人いたりもするし」　

　どこか遠くで声がする。

「そろそろ“目覚める”時間が近づいてきてるから起きない？」

　あ。この声聞き覚えがある。

「あと、面白そうな“夢”なら現実世界の僕に教えてくれたら『投稿小説』のネタになるって喜ぶと思うから、よろしくね」

　英二君だ……佐藤英二君。私の友だち。
　何言ってるんだろうな。英二君、ちょっとオタクっぽいところあるからな。
　寝子島で。へんな映画もいっしょにみたなー。
　あの暮らし、私やっぱり好きだな。
　そういえば眠っているとき別の誰かの声もしてたっけ。

『全部終わって、この島に、この塔にフツウが戻ったら。そしたら、またカラオケシャンテに行ったり、レストラン・カミチエに行ったり、miaoに行ったりしようね』

　――って。あれは瑠奈ちゃんだ。
　ほかにもいっぱい、友だちやいろんな人の声。
　声のする方へ行きたいな。
　ふつうの高校生として、生きたいな。

　そのとき私が思い出したのは、入学式で“新入生の誓い”を述べたこと。
　あのときは何にも考えてなくて、とにかくやりたいことをいっぱい言ったんだったっけ。

「新入生の誓い。１年５組、野々ののこ。
　わたしは寝子島高校で……
　友だちと一緒にお弁当を食べます！
　屋上で昼寝します！
　授業中にメモ回します！
　友だちと登校します！
　休み時間に購買室でパン買います！
　あんパンです！
　放課後、黒板に落書きします！
　歌を歌います！
　お腹壊して保健室に行きます！
　図書室で喋って怒られます！
　化学の実験失敗します！
　調理実習も失敗します！
　テストの前の日は一夜漬け！
　するつもりで寝ちゃいます！
　部活も何かやりたいです！
　帰宅部やります！
　学校帰りに駄菓子屋いきます！
　夏はアイス食べたい！
　冬は肉まん！
　食べたいっ！
　休みの日に、みんなで遊びに行きたい！
　とにかくえっと、みんなと青春やりたいっ！
　はっ！
　青春、や、やりますっ！！！」

　青春、したい。みんなと、高校生活を最後まで楽しみたい。
　いつのまにか私の傍にはもうひとりの私がいた。
　黒くて、小さな、もうひとりの私。
　世の不条理に泣いた、獣の姿した私の半身。
　私は思った。
　完璧じゃないし、永遠でもないけれど。
　寝子島でフツウの高校生活を送ったら、この子も楽しくならないかな、って。
　この子もいっしょに青春やれたらいいのになあ。
　私はほんわかそんなことを思って小さな私と手をつなぐ。
　繋がった指先からお互いが融けていくかんじがする。
　解けて交差し絡み合って一本の糸になって。
　繋がる。
　魂。
　とくん、とくん、ひとつになって振動する。
　同じ鼓動でダンスする。

　――あ、また英二君の声がする。

「ダイブしてくれたら２人いるからしっかりと受け止めるよ。ドンと来いだよ！」

　目覚めちゃおうか。
　そろそろ、目覚めちゃおうか。
　いいかもね。
　いっしょに目覚めようか。
　だって、あの場所に、戻りたいから。

　えいっと目を開けると――みんなが『私』を取り囲んでいた。

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