＜愛光島日記＞アイコウジマ・ノクターン｜リアクション

＜愛光島日記＞アイコウジマ・ノクターン

　――みんな幸せそうなのに、なんで『目覚め』ようとする……？

　ふいに『彼』ないし『彼女』はそう思った。
　そう思いながら……雑踏のなかを縫うように歩く。

　――自分は君たちを思っているというのに……。

　『彼』ないし『彼女』は待ちゆく人々の顔を見て、不貞腐れた。
　なぜか落ち着かない。
　否。
　感じているのだ。この『夢』から覚めようとしている者たちを。

　――面白くない
　――気に食わない
　――許さない

　と、ぱちん、と指を鳴らす。
　音が消える刹那に呼び出される数体ものモノトーンのカプセルギア。そして、色のない衣服をまとった者たち。
　その姿は確かに見えているのにも関わらず、街の人間はだれも気付かない。
　モノトーンの軍勢は人込みに紛れるように消えていき、『彼』ないし『彼女』は、二本の指を揃えて振り下ろした。

　――＜エンフォーサー＞、刈取ってしまえ

　その言葉に、生気のない目の兵隊は皆「アイアイサー」とつぶやいた。

――――Aikojima・Nocturne

（何、今の……）
　青い髪をアシンメトリーのボブにした少女は、ふと振り返る。すれ違った人の目に生気がないような気がしたからだ。それを「少し怖いな」と思ってしまった彼女は、思わず背中をしばし見つめてしまう。だが、
「どうしたの？」
　と問う友達の声で我に帰った。
「ううん、なんでもないよ」
　青い瞳をそっと細めて笑い、少女は友達とともに雑踏をかき分けた。

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