＜愛光島日記＞アイコウジマ・ノクターン｜リアクション

＜愛光島日記＞アイコウジマ・ノクターン

　――カウント２：Rin＆Kuon

　――『カプギア・ホログラフィック・ナイト』
　この日、中心街で行われたイベントに、
御津星凛と鷹司玖音は足を運んでいた。そして、最初に向かったのがカプギアのカプセルをゲットできるコーナーだった。
　このイベントはカプギアを普及する事も目的としているのか、初心者にレクチャーするスタッフの姿も見られた。だが、凛はそのよびかけに手を振り、まっすぐカプギアのあるマシンに向かう。
　今朝『カプセルギア』のプロモーションメールをもらった時から、妙に胸がざわついていた凛。彼女はコインを入れてレバーを回し、落ちてきたカプセルを手にすると、すぐに開けた。
「これ……」
　凛が手にしたのは、どこかおすまし顔の氷の魔女を思わせるギアだった。一方、傍らの玖音が入手したのは、武者の姿をしたギアであった。手にした途端、何故か玖音の胸が高鳴った。
「おっ、なかなかいいギアだな」
　そう言ったのは牛瀬　刻。彼もまた謎のプロモーションメールを貰ったことがきっかけでイベントにやってきたようだ。
「そういうあなたも……」
　玖音が目を向けると、刻の手には牛モチーフの少年型ギアが握られている。青をベースとした色合いがシャープなギアだ。刻は、少しだけ眉を下げいつになく真面目な顔で問う。
「なんか感じないか？　言葉には言い表せないけどさ、なんかこう……」
「懐かしい？」
　凛がそういった時だ。妙な気配を覚え３人は振り返る。そこにいたのは……モノトーンの衣服に身を包んだ若者だった。だが、目に生気がない。
「何者だっ」
　とっさに凛の前に出、玖音が問う。しかし彼らは無言でそれぞれのカプギアを見せつけると、どこからともなくリングが用意された。

『おっと！　辻バトルが開催されるようだぜ！　販売エリア特別リングにて、辻バトル承認だ！』

「「！！」」
　アナウンスに面食らう２人だったが、違和感を覚えた。そこにいたはずの刻がいないのだ。
「キザム！」
　凛が彼の姿を見つけたものの、すぐ人込みに紛れてしまっていた。ただわかったのは、逃げたのではなく、何かを見つけたような顔をしていたことだけだった。
（どうしたの？）
　刻の様子は気になるが、今は目の前のことに気を向けるべきだろう。凛はため息をこぼしながらも対戦相手へと向き直った。
（初めてのカプギアバトルだが、うまくいくだろうか……）
　玖音はごくり、と息をのみつつギアをセットする。だが、その時ふと、思った。
（はじめて……？　本当に？？）
　ふと、耳に聞こえる懐かしい声。それに何か暖かいものを覚えながらも、彼は顔を上げる。
「ここは私たちだけで切り抜けるしかないようですね」
その言葉に凛はこくり、と頷いて己のギアをセットした。

　同時に、脳裏に過ぎる謎の記憶。

（えっ？！）
　思わず氷の魔女を思わせるギアを見る凛。だが、それだけで自信が胸に込み上げてくる。同時にステージへと滑り出るギア。凛はくすっ、と笑った。
「私達に挑むなんて、ツイてない」
　襲い掛かってくる堕天使のようなギア『エンフォーサーni1』が熱戦を放ってくる。それを巧みな操作でよける氷の魔女。同時にビットを放ちかく乱を狙う。
（今は、チャージの時）
　凛がアイコンタクトをすれば、玖音が頷く。若武者を思わせるギア『頼光』が氷の魔女を庇うよう動き、襲い掛かってきた敵に紫電一閃の一突きを見舞う。
　それを見た玖音の脳裏が、一瞬だけ真っ白になる。
「あぁ……っ！」
（私は知ってる。この、疾風迅雷の動きを！）
　ずきり、と痛む頭を押さえギアを操作する玖音。それでも『頼光』は氷の魔女と初めてにしては完璧すぎる連携を見せる。
　盾とビットで攻撃を防ぐ氷の魔女は、投げられた槍へと剣ビットを向けて防ぐ。
「私たちは、きっと大丈夫」
　凛は、そっと玖音にいう。玖音は、痛む頭を押さえ１つ頷いた。

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