『ワン』ダフルで『ニャン』ダフル？｜リアクション

『ワン』ダフルで『ニャン』ダフル？

　……夜の闇はますます深くなっていった。
　昼間にはしゃぎすぎた影響か、動物たちは互いに体を寄せ合ってぐったりと身を預けており、なかにはすっかり寝息を立てて熟睡している者もいた。
　獣たちの不安は尽きない、いつ戻れるのか、ひょっとしたら永久にこの姿でいなければならないのか……。そう考えてしまうものも少なくなかったが、幸か不幸か、次第に濃くなる闇は手を引くように眠気を誘い、動物たちはみなぐったりと、嘆くことはせず互いに身を寄せ合っていた。暖かい毛で覆われた体を摺り寄せあっているので、肌寒いということもない。
(むにゃ……、いけね、今何時だ……？)
　ぐっすりと横たわった動物たちの群れの中、ラッセルがふと目をさまし、細い目で立ち上がろうとする。
　携帯……。ラッセルは時刻を知ろうとして、無意識のうちにポケットへと手を伸ばしていた。ぼんやりした頭のまま、取り出した携帯のボタンに触れ、すればディスプレイに明光がともり、現在の時刻をすることが出来た。

「……ん？」
　その時になってやっと、ラッセルは、己の目線がまるで違っていたことに気が付いた。
「お、おおっ！」
　そして、ポケットから携帯を取り出せたこと、指でボタンを押せたこと。それらを一纏めに実感する。
　決して、動物には出来ないことだ。
「おい、みんな起きろよっ！」
「……ん、なんだ……？」
　寝起きのややかすれた声で、ラッセルに体を寄せていた響也が胡坐をかいて起き上がる。そしてその瞬間、やはり自身の身に起きた『新たな変化』に気付いたようで目を見開く。
「これは……！」
「っしゃ！　戻ったーっ！！」
　見渡す限りそこら中にいたはずの動物たちの姿はない。代わりににあるのは、ラッセルの声で起こされ、ゆっくりと身をもたげ始める、立派な人の姿をした寝子島高生たちの姿。
　ついに、その時が来たのだ。神魂の影響が解けた。人の姿を取り戻した。ラッセルは見せつけるように人の腕を掲げて、歓声を高らかに張り上げた。
「あ……あっ！　元に、戻った……？　よ、よかったぁぁぁ……！」
　先程まで、不安のあまり涙を見せていた羽衣もまた、自身の人としての手指をひ開いたり握ったりして、神魂の影響が解けたことを実感する。そして、それが夢でないことを悟って胸をなでおろした。
　その場の全員が、元の姿を取り戻して安堵を覚えた。きっとこの場にいない他の神魂の被害者たちも、あるべき元の姿を取り戻していることだろう。
　
　嬉しさと安堵のあまり、一同は肩を叩きあったり抱き合ったりして喜びを噛み締めあったが、ふと、ラッセルが携帯の時刻を再確認し、途端に声を荒げてしまった。
「あぁ！　やべぇ！　もう日付変わってる！」
　日付をよくよく確認すると、今日ではないことが分かる。いつのまにやらもう深夜の０時を回っていたらしい。決して、高校生が集団でたむろっていられる時間帯ではない。
「いけないアル、明日フツーに学校アル！」
「やばっ、私も早く帰らないと怒られる！」
　それを知らされ、華菜子や丸美たちが目を見開く。そして、明日の朝遅刻する自分や怒り狂う親や寮長の顔を想像し、そして、人の姿を無事取り戻せた喜びをかみしめながら、いそいそと帰る仕度を始めた。
　元の姿を取り戻した寝子島高生は、真夜中の闇の中、各々の帰路につくべく別れのあいさつと共に散って行った。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター： tsuyosi
ファンレターはマスターページから！

tsuyosiです。この度は自分のシナリオにご参加いただきありがとうございました。リアクションが完成いたしましたので、ここに公開させて頂きます。動物化なんて珍事に付き合って下さったキャラクターの皆様に感謝を添えるとともに、様々な切り口のアクションを送っていただきどうもありがとうございました！　また、皆様のキャラクターにお会いできる日を楽しみにしております。

↑ページトップに戻る