朝。それを目覚めのものに告げるように野鳥が賑々しくさえずり、窓からは柔らかな陽の光が差し込んでいた。
「ふわぁ、よく寝たのです~」
パジャマ姿の
御陵 春哉が布団の中からのそりと顔を覗かせ、そのまま指を組んで伸びをする。清々しい朝日が部屋を満たしていれば自然とまどろみも消えて、心地の良い目覚めを迎えることが叶った。
あくび混じりで枕元の目覚まし時計を見てみれば、起き上がるにはちょうど良い時間である。休日だとはいえ、あまりダラダラしているのもよくない。春哉は目をくすりつつ、布団をたたんで部屋の床へと降り立った。
さて、今日は何をしようか。とりあえずは顔を洗って、朝ごはんを食べて、トランペットの練習をして……楽しげな気分で休日一日のスケジュールを考えながら、やや寝癖のついた髪を撫でる。
そこで、春哉はふと目を丸めた。妙な感触が指先をかすめたのだ。
「あれ?」
一瞬、髪飾りのリボンをつけたまま寝てしまったのかと思ったが、どうやら違うらしい。リボンよりも柔らかな、もこもこした何かの感触。しかしそれに心当たりなどある筈もなく、気のせいかと思った春哉は、また髪を撫でるように頭の上に手をやってみる。
しかし、感触は絶えずそこにある。手を這わせてそれの場所を確認し、指でコリコリともんでみれば、ぬいぐるみを触っているみたいでふわふわして気持ちがよかった。
「あれれ……?」
何かが頭についている、それは確定的である。では、それは一体何なのか? 春哉は疑うように、指先で頭にある何かをいじくり続けた。そうしているうち、寝ぼけた頭で感じていた違和感は次第に無視できないものとなる。何だか不気味に思えてきた春哉は、首を傾げつつも机へと歩み寄り、置いてある手鏡を手に取った。
鏡を傾け、自身の顔をを映す。
その瞬間、自分はまだ夢の中ではないのかと目を疑った。
「ふえぇぇっ!!?」
鏡に映った自身の顔を見て、春哉はたまらずに悲鳴を上げた。その頭に生えていたのは、柔い毛の生え揃った肉厚の三角形。さも愛らしいぬいぐるみのような、紛れもない二つの動物の耳だった。
「あ、あわわわ……」
鏡で見て、触って、それを何度も何度も確認する。ついでに頬をつねってこの現実が夢かどうかも試してみた。しかし、いくら頬に痛みをくれてやっても鏡に映る動物の耳が霧散してくれることはなく。これが決して夢でないと思い知らされるだけであった。
(こんな姿で……これから一体、どっちの耳で音楽を聴けばいいんです?)
多少特殊でも、これが非常事態であることは誰の目にも明確だったが、一方の春哉の心配は少しズレていた。
初めまして、本シナリオを担当させて頂くtsuyosiと申します。今回は、ごくごく当たり前の休日の朝、キャラクターが次々と動物化してしまうという怪奇現象のシナリオになります。
・動物化してしまう怪奇現象……『しっぽ病』は、発現すると、まず動物の耳やしっぽが生えてしまいます。それから時間の経過と共に動物化が進行し(おもわず動物の鳴き声がでてしまったり、その動物の仕草や特徴が垣間見えたりし始める)、最終的には本物同然の動物と化してしまいます。病とありますが特に細菌やウイルスが原因ではなく、神魂の影響かと思われます。
・『しっぽ病』は宿した人の体をゆっくりと動物の体へと変化させていきますが、その進行具合には個人差がある模様です。また、完全に動物になってしまったとしても人語を解し、話すことが出来ます。逆に、野良猫など他の動物と会話をすることなどは出来ません。
・『しっぽ病』は朝の6時から始まり、次の日の0時までの18時間続きます。日付が変わった瞬間、全ての動物化は解け、『しっぽ病』にかかっていた全員が人間へと戻ります。
・リアクションにて描写できる場所は、キャットロード、寝子ヶ浜海浜公園、図書館のいずれかになります。また、『しっぽ病』にかかった人はどうしても広い公園などに行きたくなってしまう模様です。
・シナリオ当日は寝子島高校はお休みです。『しっぽ病』のせいで多少窮屈ではありますが、どうぞ充実した休日にしてください。
※皆様へ。今回のシナリオでは、動物化の進行具合の個人差の設定(すぐに完全な動物と化したり、最後まで完全な動物にはならなかったり等)、並びに、キャラクターが変身したい動物を、犬、猫、兎、羊、熊、狼、ライオンの内から選んでいただけます。希望がございましたらばぜひアクション欄にてご一報ください。