【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～｜リアクション

【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～

「まただ……またしても「フツウ」かぁっっ！！」

　奇想天外なコースを前にニャンダムの着ぐるみを着た水上桜が叫ぶ。
　だが、叫んだところで現実は変わらない。きっと叫んだ事でコースが変わるならば桜は幾らでも叫んだ事だろう。

　工事現場と大観覧車、それに寝子島街道のそれぞれのコースを死ぬ気で駆け抜けた桜。
　ただでさえ着ぐるみでマラソンをするという頭おかしいのではないかという状況なのに、そこから更にフツウのコースで難易度倍増となっても気合で駆け抜けたのだ。
　はっきり言って普通は気合を入れようとも無理な気もするが、それでもいけた辺り桜も大概ではないだろうか。

　そして、奇想天外なコースを潜り抜けた桜の前に最後の関門が現れた。
　沢山の猫が集う猫の小道である。

「猫は好き、だけど……ここまで沢山いるのもなんだかねぇ……」

　猫自体は好きだけど、だからといってここまで集まっていると流石に不気味さを感じずにはいられないようだ。

「でも、別に妨害とかをしてくるわけではないのかしら？」

　猫達はただ、エサが欲しそうであったり撫でて欲しそうであったりという様子だが、寝子島街道の熊のように積極的な妨害を仕掛けてくるわけではないようだ。
　それならば問題ないと猫達の間を通り抜けて桜が走っていこうとすると、直ぐに道を塞がれてしまった。しかもにゃーにゃーと鳴いて足元に纏わりついてくるではないか。

「これは……困ったわね」

　下手に相手をしたら更に猫達が集まってきて囲まれてしまいそうなので、無視して抜け出したいと桜は考えていたが、根本が猫好きな為に完全に無視を仕切る事はできないでいた。

「あ、ちょっと。あまり足元に来ると尻尾とか踏んで危ないよ」

　そうしていると桜の予想通りに次々と寄ってくる猫が増えてきて、次第に足を踏み出す事さえできない状況へと陥っていく。

「こうなれば……猫好きとして今まで数々の猫を相手にしてきた手腕を見せる時が来たようね」

　もはや相手をせずに脱出する事は難しいと判断した桜は、次善の策として時間をかけずに彼らの相手をして抜け出す事にした。

「さぁ、相手をしてあげるわ」

　まずは足へとずっとスリスリしている一匹の黒猫。
　そっと頭を撫でた後に今度は首や顎を滑らせるように撫でる。その手腕たるやまるでプロであるかのようだ。そんなプロがあるのかは不明だが。
　すると、そう時間をかけずに猫は蕩けたように寝ころんだ。その顔は満足したと語っている。
　そう。桜はアクセサリー作りが得意なだけあって、指を使う細やかな作業が上手なのだ。そして、猫好きであるが故に今まで沢山の野良猫をその指で蕩けさせてきたのだ。

「次はあなたね？」

　こうして次々と猫達を撫でていく桜によって、そう時間もかからずに何とか脱出できる状況へとなっていく。
　その後、優しく猫達を引き離した桜はレースへと復帰していった。

「それでもやっぱりそれなりの時間はかかったわね……」

　ここから一位になるのは流石に難しいそうだと思いながら、桜は残りのコースを走っていくのだった。