【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～｜リアクション

【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～

「わぁい、可愛い着ぐるみが沢山いるよぉー！」

　と、多くの着ぐるみを見て喜んでいるのは曖浜瑠樹だ。
　ゆるキャラや着ぐるみが大好きな瑠樹にとってこのマラソン大会は天国のような空間であった。
　瑠樹自身もこのマラソン大会に参加する為に黒白こにゃんこの着ぐるみを着ている。

「可愛いねぇ、和むなぁ……」

　ほんわかしながらそう呟く瑠樹。
　だが、万が一にもろっこんを発動しないように気を付けなければならない。もし発動してしまうと周囲にいる人を皆脱力させてしまうからだ。

「あ、あっちのわんこの着ぐるみもとてもいいなぁ。もふもふしてそうだねぇ……」

　もうじきマラソンがスタートしてしまうのだが、瑠樹は未だ移動する様子を見せない。
　結局、皆が移動しているのを見てようやく気付いて何とかスタートに間に合うのだった。

　マラソンがスタートしてからも瑠樹の着ぐるみ観察タイムは止まらないどころか寧ろ加速している。
　着ぐるみを着て走っているというのに、そんな事を全く感じさえない走りをしつつ、ほんわかと着ぐるみを見ているという凄いのか何なのか良く分からない事をしている。いや、凄いのは確かなはずだ。だけど、それを認めてしまうのは何か違うような気もする。
　しかし、それもとあるコースに着くまでの事だった。

「あっ、すごいねぇ、にゃんこがたーくさん！」

　様々な種類の猫が所狭しと存在している。ここは神魂の影響によって変質したコースの一つ、猫の小道だ。
　その小道を見て、瑠樹の元々高かったテンションが更に上がる。上がり過ぎて宇宙すら突破しそうな勢いである。

「黒白三毛トラ、足の短いにゃんこも尻尾まんまるなにゃんこも、小さなこにゃんこもおじいさんおばあさんなにゃんこも色んなにゃんこがたーくさんいるよぉ！！」

　人の瞳とはここまで爛々と輝くものだっただろうか。もしかしたら今の瑠樹の瞳の中には豆電球でも入っているのではないだろうか？
　瑠樹は猫を踏まないように気を付けて、猫達の中を歩きながら撫でて欲しそうにしている猫は全て撫でていっている。

「可愛いねぇ、人懐っこいねぇ。えっと、君はもしかしてごはんが欲しいの？　ごはんは……持ってないよぉ、ごめんなぁ」

　そう言って猫に謝っていると、ランナーの一人が猫の誘惑を振り切って走っていこうとしている。
　当然の事ながら、この小道へとたどり着いているのは瑠樹だけではない。つまりどういう事かと言えば、瑠樹的には沢山のにゃんこに囲まれつつ着ぐるみを見る事ができるという天国の中で天国を味わうという欲張りセットみたいになっているのだ。

「にゃんこ皆可愛いねぇ、着ぐるみも可愛いねぇ……和むなぁ……」

　その和みようといったら今年一番と言っても過言ではないかもしれない程だ。それ故に、うっかりろっこんが発動してしまうのも仕方ないのかもしれない。

（……あっ、しまったぁ！？）

　うっかり発動した瑠樹のろっこん【ゆるゆる和みと恩恵の輪】の効果により猫達はすっかりふにゃぁと脱力し和み状態となってしまった。
　こうなってしまっては仕方ないと、瑠樹はこの隙に先に進む事にしたようだ。――ただ、随分と名残惜しそうではあったが。
　幸いであったのは、ろっこんが発動した時に他のランナーがいなかった事だ。もし、巻き添えになった人がいたら瑠樹がどうにかしなければならないところだっただろう。

「一緒に走ってくれて、ありがとうなぁ」

　そして、その後何とかゴールできた瑠樹は、そう言いながら脱いだ着ぐるみを優しい手つきで労わっていたと言う。