【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～｜リアクション

【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～

「う～ん、なんかカッコいいワンちゃんですねぇ……？」

　巫部紫苑は不思議そうに首を傾げている。鏡で自分の着ぐるみ姿を見ているのだが、どうにも本人の思っているのと少し違うようだ。
　それもその筈。紫苑は自らの着ぐるみを犬だと思っているが、実のところ狼なのだ。だが、それに気付く様子はない。心なしか少しだけ着ぐるみの狼の目がしょんぼりとしているようにも見える。

「でも、カッコいいワンちゃんもいいですよね。よ～し頑張りますよ～♪」

　どうやら差異については些細な事と言う事になったようで、気を取り直した紫苑はスタート地点へと向かっていく。
　そして、ついに着ぐるみマラソン大会のスタートである。

（う～ん、やっぱり普段と違って走りづらいですね……胸も着ぐるみにポンポン当たりますし……）

　着ぐるみを着ている為に外からは解らないが、内部では紫苑の暴力的な胸がポヨンポヨンと躍動し着ぐるみに当たっている。
　もし仮に見えていたとしたら、多くの男性が内またになっていたかもしれない。それが未然に防がれたのは果たして世の為になったのだろうか？　永遠の謎である。

「あら？　なんだかすごい所を走るコースですね……ゴンドラの上を飛び乗るんですか？」

　着ぐるみのマラソンに苦戦しつつも走る紫苑の前にそのコースは現れた。
　シーサイドアウトレット近くにある大観覧車。そのゴンドラの上をジャンプしていくコースだ。

「これはマラソンの範疇に入るのか疑問ですけど、とりあえず挑戦してみましょうか」

　そう言って紫苑は大観覧車のコースへと挑戦を始めた。

「よっ！　とっとっ」

　勢い良く最初のゴンドラに飛び乗り落ちないようにバランスを取る。その動作に迷いはなくまた危なげもない。

「意外と平気ですね……何だか体も軽い感じがしますし、サクサク行きましょう♪」

　意外と上手くいっている事で気をよくしたのか、次々にゴンドラの上を飛んでいく紫苑。
　しかし、それが慢心を生んでしまったのか、ゴンドラに飛び移った後にバランスを崩して落ちてしまった。

「あっ！？　……って、ここは、大観覧車のところの最初ですか。なるほど、失敗したら最初に戻されるんですねぇ。これはこれは油断してしまいましたねぇ♪」

　そう言いつつも紫苑はとても楽しそうに笑っている。

「でも、良く考えてみたらこれって最初から海を行く事はできないんでしょうか？　そちらの方が早そうですけど」

　うーんと悩んだ結果、考えても埒があかないので一回試してみようと海を泳いでみると、直ぐに海はまずい事が判明した。
　何故なら、紫苑の後を鮫が追いかけてきているからだ。

「なるほど、下はこういうコースなんですね……って、ちょっと追い付かれそうですねぇ……おっと？」

　呟きながらもマイペースに泳いでいると、鮫に着ぐるみの端を食いつかれてしまう紫苑。しかし、持ち前の反射神経でその瞬間に着ぐるみを脱ぎ捨てて着ぐるみを囮に脱出をする。
　因みに着ぐるみの下は水着だったので泳ぐのには問題ないが、陸に上がった後は問題だ。例え紫苑本人が気にせずとも問題だ。世の男性が水着姿で走る紫苑の姿を見てしまうと大変な事になってしまうだろう。
　だが、結論から言えば紫苑が水着姿で走る事はなかった。何故か全く同じ着ぐるみが紫苑の前へと用意されたからだ。

「一体どなたが……？」

　首を傾げるもまだマラソンの最中である事を思い出し急いで着ぐるみを着てから再び走り出し、その後無事にゴールをするのだった。

「ふぅ～、色々ありましたけど楽しいマラソン大会でしたね」

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