【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～｜リアクション

【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～

「今年もマラソン大会あるんだ」

　それはある日の事。恵御納夏朝はマラソン大会の告知のポスターを見かけた。

「今回は着ぐるみを着て走る……着ぐるみ！？」

　ポスターに書いてある概要を読んでいると異様な一文がある事に夏朝は気付いた。それはお手本のような二度見であったが。

「何で着ぐるみ……？　一応、それを考慮してか水分補給所は多く設置はされているみたいだけど……」

　しかし、それは永遠の謎である。
　どうするか悩みに悩んだ結果、夏朝は結局今回のマラソン大会に出る事にした。理由は何となくとしか言いようがなかった。
　着る着ぐるみはやはりふわふわな毛の猫にしたようだ。
　そして、当日。

「やっぱりペースを守って走るのが大事だよね」

　ふわふわな毛の猫の着ぐるみを着た夏朝は、スタートした後に走りながらここからどのように走るかのプランを再確認しているようだ。
　着ぐるみを着ていなければ自分がどれくらい走れるかの把握は簡単だが、着ぐるみを着ているとなるとそうもいかない。それ故により慎重にペースを維持するつもりのようだ。
　だが、そんなプランはいきなり破綻する事になる。

「ね、猫さんが……可愛い猫さんが沢山いる……！？」

　その時、夏朝の脳内に電流が走る。それほどまでに夏朝にとって衝撃的な光景だったという事だ。

「この辺りはここまで猫さん多くなかった気がするのに、どうして……？　まさか……猫さんの大集会……？」

　猫が大好きな夏朝はこの寝子島において普段猫が集まり易い場所は網羅している。彼女のデーターではこの小道では猫を見かける事はあれど、こんな風に集合しているなんて情報はなかった。
　突然の事に嬉しいのか何なのか自分の感情が良く分からなくなっている夏朝だったが、そんな彼女が取った行動は猫のおやつを買ってくるというものであった。

（通り抜けなきゃ、通り……抜け……ああああ我慢できないぃぃ！！）

　猫のおやつを買ってきた夏朝だが、良く考えてみると現在マラソンに参加中である事をようやく思い出していた。
　だから、マラソンに戻ろうと考えて立ち上がったのだが、ご飯ほしそうな、撫でてほしそうな、かまってほしそうな猫達の目と鳴き声に葛藤を強いられていた。

　結局、猫達の誘惑に勝つ事はできずにちょっとだけだからね、と言いつつ足元にいる一匹の猫を撫でる。
　しかし、今ここには大勢の猫が集まっているのだ。一匹を撫でてしまえばそれで済むわけがない。沢山の猫が自らを見ている事に夏朝はすぐに気づいた。

（ああっ沢山の猫さんがこっち見てる！？）

　仕方なく夏朝は猫達を撫でて撫でて撫でて撫でて撫でまくった。もうそれはエンドレスに撫でまくった。一体どれほどの時間撫でたのか解らなくなるほどだ。

（ぁぁぁ猫さん達可愛いのに僕の手が足りないー！？）

　自分の手が足りないと嘆いた事のある人間はきっと他にもいる。けれど、猫を撫でる手が足りないと嘆いた人間は恐らく夏朝くらいのものだろう。
　そこで夏朝は先ほど買ってきた猫のおやつをまだ猫達にあげていない事に気付く。これを上げれば流石に猫達はこの猫のおやつに集中するはずだ。そうなればきっとここから抜け出す事もできるだろう。

「猫さん達、これでも食ら……じゃなかった食べてー！？」

　ぱっとバラまいてから、猫のおやつに群がる猫へと埋もれたいのを我慢して夏朝はそっと抜け出す。後で来たら、また撫でさせてねー！　と、心の中で呼びかけて。
　そして、無事にゴールした後、先ほどの小道の辺りまで戻って猫達を探す夏朝の姿があったが再びあの猫の集団に出会えたのかどうか。それはまた別のお話である。

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