【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～｜リアクション

【マラソン大会】着ぐるみで仲良く走ろう♪　～妨害旅情編～

「しっかし、今更だけどこの着ぐるみ走り難そうだよなぁ……」

　佐藤英二は自らが着ているパトカーの着ぐるみを確認して呟く。
　英二がこの着ぐるみを着ている理由は至極簡単だ。どれにするかイマイチ決めきれなかったが為にランダム選択に頼った結果、乗り物になったからだ。

「まぁでも、練習してるところ見る限り、皆も中々苦労しているみたいだし完走目指して頑張るとしますか」

　そう言って周囲に視界を巡らしていると、不意に聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「ちゃんと準備運動はしないとねー」
「この声は……」

　英二が振り向くとそこには入念に準備運動をしている野々ののこの姿があった。
　ののこは誰にでも明るく接する女の子で、そんな彼女の事が英二が気になっていた。彼女の明るい笑顔を見るのが好きで、今の気さくな距離感も気に入っているのだ。

「こんにちは、野々さん」
「あ、英二君！　こんにちは！」

　英二がののこに挨拶をすると、本日も元気一杯で返事が返ってくる。

「野々さんもマラソンに出るんだ？」
「うん。だって、着ぐるみでマラソンなんてすっごい楽しそうだし、そりゃ出るよー！」

　どんな事でも楽しめる、また楽しそうだと思った事はどんどんやっていくののこらしい発言と言えるだろう。

「その恰好って事は英二君も出るんだねー」
「うんまぁ、正直あまり気は進まないけど学校行事だしね」
「スタートする前からそんなんじゃダメだよ！　もっと楽しんでいかないと！」
「楽しめるかなぁ？」
「こういうのは気持ちもとても大切なんだよ？　って、いけない。そろそろ着ぐるみに着替えなきゃ」
「あぁ、うん。じゃあ、またゴールした後にでも話せたら話そう」

　わかったーと手を振って答えながら、慌てて走り出していくののこ。この慌ただしさこそ彼女の性格を現わしている。
　スタート前にののこに会えた事は英二にとって僥倖と言えただろう。これによって英二はこの後のマラソンのやる気も出たのだから。

「ふー……きつかった……」

　大量の汗と共に息を吐く英二。マラソン自体は一定のペースをずっと保つ事で何とかゴールする事ができたようだ。
　しかし、着ぐるみを着てのマラソンは英二の予想以上にとてもきつかった。正直、スタート前にののこに会えた事でテンションを上げれていたから良かったが、そうでなければ途中でリタイアしていたかもしれない。

「お、英二君もゴールしたんだね！」

　すると、善哉を片手にすっかりくつろぎモードののこのと再びに邂逅。

「やぁ、野々さん。その様子だとそっちは割と前にゴールしてたのかな？」
「うーん、そこまでの差ではなかったんじゃないかなー？」
「そう？　結構元気そうだからそうかなと思ったんだけど……」

　どう見てもまだまだ元気があり余ってる様子だが、野々さんだからなと思い直す。

「それにしても着ぐるみで走るのって大変で本当ものすごく疲れたけど……完走した後はやり遂げた感があって充実感がスゴクあるね」
「うん！　すごく楽しかった！」

　明るく笑うののこのその姿は、英二が好きないつもの姿で。本当に疲れていないんだなと思わせるのには十分だった。

「僕も善哉を食べようかな。終った後に食べる善哉は格別な味がしそうだ」
「あ、善哉はね、あっちで貰えるよー」

　こうして英二は暫くの間、ののこと和やかな時間を過ごしたのだった。

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