エブリデイ☆パンプキンナイト！｜リアクション

エブリデイ☆パンプキンナイト！

★とある賑やかな街の、何でもない日常のお話（１）

「ぬいぐるみに、ポプリに、ブローチ、指輪……今回のは、いつも以上に格別の出来だねえ」

　龍の角を持つ男は、ゴツゴツとした指で、けれど繊細に検品を行って、感嘆の息を漏らした。
　ここは、街のとある雑貨屋。
　レオンが、彼の『ばあちゃん』が健在だった頃からよく知っている店だ。
　彼の『ばあちゃん』も、この店に魔法の品を納品し、２人の暮らしを支えていた。

「いい出来だって言うんなら、値段も良くしてくれるんだろうな？」
「ああ、そりゃ勿論。これくらいでどうかね？」
「……まあ、悪くはねえな。助かる」

　馴染みの相手なれば、他人を遠ざけて生きるレオンからしても、幾らかは気安い。
　布袋にいつもより多めの硬貨を詰めてもらって、有難くそれを受け取る。

「それじゃ、今日はこれで。またよろしくな」
「ああ、また頼むよ。しかし、お前の手先の器用なのはばあさん譲りかね」
「どうだろうな。まじないや薬草、宝石なんかの扱いはばあちゃん譲りで間違いねえけど」
「お前の作る品は、実際人気があってね。どうだい、いい加減こっちに出てくる気は――」
「断る。……ひとりの方が気楽だ」

　言い捨てて、レオンは、相手の言葉を待たずに店を出た。
　頼もしかったはずの硬貨の重みが、ズシリと心に圧し掛かってくる。

（俺は……）

　自分の、心の底を覗いてみる。
　誰かに会いたい、話をしたいという気持ちは、己にまでは隠し切れなかった。
　毎週街に出ているのだって、作った物を売るためだけでなく、本当は、人恋しいからだ。

「……疲れた」

　身体ではなく、たぶん、どうにも素直になれない己の心が。

　そのまま必要な物を買って帰る気分にもなれなくて、レオンは、カフェの方へと足を向けた。