エブリデイ☆パンプキンナイト！｜リアクション

エブリデイ☆パンプキンナイト！

★パンプキン・モーニング！（３）

　南瓜色の空が、眼鏡越しにも眩しい。

（いい天気だな）

　いつもと同じはずの空の色が、今日のあやめには、一層鮮やかに感じられた。
　キャンディの雨が降るという予報が出ていたけれど、家に籠っているのがもったいなく思えるような。

（……なんて。我ながら、普段の僕らしくない考えだ）

　街外れの洋館の２階、自室の窓から遠くに臨む街の様子だって、今日はひときわ楽しげに見える。
　夢見が良かったからかもしれない、と、あやめは静かに思考した。

　あやめは悪魔族の一員で、僅かに夢魔の血も引いている。
　夜や、闇や、ひとの心に関する魔法が得意なあやめには、密やかな趣味があった。

　夜になると、あやめは、他人の夢を訪ねては、その様子を観察している。
　稀に、少しの間、夢の中の住人になって、夢の主と一緒に時を過ごすこともあった。
　夢の中では自分もそのひとの、友達に、大切なひとになれたように感じられて。
　だからあやめは、その、特別な夜の時間を愛している。

　敢えて術を緩めてあるために、夢の中の出来事は、相手は勿論、自分も殆ど覚えていない。

（だけど、『楽しかった』感覚があれば、空想や読書の彩りには十分だ）

　朝目覚めた時に、ふわふわと胸が膨らむ、あの感じ。
　あれがあれば、ひとりぼっちでも生きていけると、あやめは思っている。

　ただ、今日のそのふわふわは、何時ものそれよりも、余計に色濃かった。
　ああ楽しかった、と口元がごく仄かに緩む、それだけでは終わらない程に。
　だから、眠気覚ましの珈琲を飲み終えた今も心がやけに弾んでいて、

（……そういえば、以前書いた脚本も、ちょうど公演されているところだったっけ）

　なんて、普段なら用がなければ足が向かない街に出かけるための丁度いい理由も、頭が勝手に探してしまう。

（たまには……外で過ごすのも、いいかもしれない）

　小さく頷いて、あやめはゆるりと、街へ出かける支度を始めるのだった。

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