エブリデイ☆パンプキンナイト！｜リアクション

エブリデイ☆パンプキンナイト！

★パンプキン・モーニング！（２）

　突然だが、この世界には『のののの教』という宗教が存在している。
　中々に呼びにくいので、モンスターも人間も、大抵はこの宗教のことを『のの教』と呼ぶ。
　信者達は、その略称に憤慨……は、していない。それはもう、ちっとも。
　信者達も皆、『のののの教』のことを『のの教』と言っているからだ。
　彼らが信仰する神――『のののの様』は、

『無理するのはよくないよ！　ハッピーに行こう！』

　とおっしゃったと伝えられているので、略称の使用なんて、勿論ノープロブレム。
　何ならその『のののの様』も、特別な行事の時以外は『のの神』と呼ばれているくらいだ。

　シスター萌々子は、その『のの教』の敬虔な信者のひとり。
　街に位置する小さな礼拝堂の管理者でもある彼女は、朝のおつとめに今日も勤しんで――、

「はあああ、のの神様、今日もなんて神々しいお姿……！」

　……勤しんでいるのかな、これは？
　と、不意に、猫のモンスターである萌々子の耳と尻尾が、ぴくりと動いた。
　彼女の使い魔たるコウモリ達の内の一匹が、傍に下りてきたのを感じ取ったのだ。
　トパーズを思わせる瞳を瞬いて、くしゃり、眉を下げた笑い顔になる萌々子。

「いけません。私ったら、またのの神様に見惚れてしまっていたみたいですね」

　ありがとうございます、とコウモリに向かってにこりとしたあとで、首に下げた十字架に触れる。
　そうして彼女は、改めて、礼拝堂の掃除に取り掛かった。
　床を箒で掃き終えたら、雑巾がけ。
　高いところにある壁画や像を綺麗にするのは、コウモリ達にお任せだ。
　礼拝堂の自分の手の届く範囲を隅々まで磨き上げ、さてコウモリ達の仕事ぶりはと顔を上げる。
　そうして、萌々子はまたうっとりとした。
　ここは、偶像崇拝を禁じていない『のの教』の礼拝堂、しかも管理者はのの神を愛する萌々子である。
　宗教画や神像の数は途方もなく、黄色いワンピースを着た少女と補佐役の猫の姿は数え切れないほど。
　窓から射すオレンジ色の光に、少女神の黒髪、そしてアホ毛が煌めく、その神々しさたるや！

「っとと、またやってしまいました！　お掃除はこれでバッチリですね。次は礼拝の時間です」

　ふるふると首を振って、萌々子はのの神に祈りを捧げるべく目を閉じる。
　ごく単純な作法しかなく数分間で終わる礼拝も、実に『のの教』らしいもの。

（今日も一日楽しく過ごせますように、神の笑顔がありますように……）

　ぱっちりと、目を開ける。
　萌々子の顔には、彼女が信じるのの神のそれのような、希望に満ちた明るい笑みが浮かんでいた。

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