ドラゴン・キャットファイト！｜リアクション

ドラゴン・キャットファイト！

★龍姫ＶＳ女皇（４）

　――カク、ン。

　女皇・フェラマが膝を付く。
　地面が、ずしん、と揺れた。

「……どうだ。これが妾の、貴様が小馬鹿にした宝石竜の実力だ！」

　どやっとばかりに胸を張った宝石竜の瞳が、爛々と煌めく。
　その瞬間、

「ふ……ふふ……」

　膝を付いて俯いたまま、フェラマが、笑い声を漏らした。
　顔を上げたフェラマのかんばせには、うっとりとした微笑が浮かんでいる。

「一瞬……ほんの一瞬だけれど、意識が飛んだわ……。この私が、膝を付くだなんて！」

　その声は、何処か朗らかですらあった。
　一種異様なその様子を前に、けれど龍姫は、その眼差しをキッと険しいものにする。

「まだ倒れぬか……」
「当たり前でしょう？　まだ、まだ、遊び足りないわ」

　フェラマから、憤怒の気配はもう感じられない。
　けれど戦意、或いは闘志は、生き生きとした瞳、そして彼女の全身から、確かに迸っていた。
　龍姫の唇を、疲れたようなため息が揺らす。

「この戦闘狂め……やはりでかいだけのただの獣か」
「あら？　これ以上私に火を付けてどうするの？」

　呆れの色が滲む台詞にくすりとして、フェラマは遂に――その翼に風を纏う。

「いいわ、空で決着つけましょうよ」

　魔法と身軽さで渡り合えるのはここまでよ！　と、フェラマは上空へ。

「……『日緋色金の翼』か。厄介な」

　最早止まるを知らぬフェラマの様子に、龍姫が苦虫を噛み潰すのも致し方なし。
　何せ、やる気満々のフェラマが最も得意とするのは空中戦。
　飛行中の彼女の素早さは、強健な竜族の中でも類稀なるものと謳われている。
　けれども、此処で引いては、龍姫の名が廃るというもの。
　口元を引き締めて、龍姫もフェラマの元へと飛翔した。

「来たわね！　さあ、始めましょう！」

　言うや、フェラマの姿が、龍姫の視界から消える。
　途端、背後から襲う爪の斬撃。
　空中をその翼で支配する女皇の様は、さながら、舞姫の如き軽やかさだ。
　痛みに龍姫が顔を顰めた、その刹那。
　高速の体当たりが、死角から龍姫に迫った。

「くっ！」

　辛うじて、躱す。
　しかし、女皇の日緋色金の尾が、龍姫をぐんと打ち据えた。
　優美な姿とは裏腹の、力強い一撃。

（まだまだ行くわよ！　単純だけれど、技は膂力で砕くのが一番強くて気持ち良いんだから！）

　再びの突進が龍姫を襲う。
　けれど今度は、龍姫も、回避に徹するだけでは終わらなかった。
　唸りを上げる尻尾に容赦なく打たれ、落下しながらも、魔力を精密に操作する。

（流石に、あの尾を的確にコントロールすれば、多少なりとも速度は落ちる……！）

　ならば、こちらの一撃を食らわせるには、『敢えて打たれてやればいい』。
　そして――弾丸のようになって龍姫の『マナブレイク』は宙を走り、フェラマの翼を直撃した。

（これでどう、だ……！）

　落ちる、落ちる、落ちていく。

　気付けば龍姫は――己の領域、『玉の鉱道』に仰向けになっていた。
　地面の揺れは最早なく、すぐ傍らには、にこにこと上品に微笑む、フェラマの姿。

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