絶対に英語をしゃべってはいけない密室ホテル｜リアクション

絶対に英語をしゃべってはいけない密室ホテル

●ハラハラ状態の食事

　食堂に着くと、5人は同じテーブルにつき、それぞれ食べたいものを頼んだ。
　ナンシーは寝子島丼。
　他の面々は、洋食は英語や和製英語があるので【スルー】。日本生まれの洋食も【アウト】になりそうなので頼まず。
　さんざん悩んだ末、和食や日本料理に決めたのだった。
　待っている間、無言でいるのも何なので水守流はナンシーに話しかけた。
「ところでナンシー＝サンは寝子島へは観光で？」
「ソウデース。この島にはキャ……」
　【キャット】と言いかけたところで佐藤英二が「猫のこと？」と【フォロー】。
「猫が好きなのかな？」
「大好きデース！　ネコジマにはタクサンいますカー？」
　佐藤【グッジョブ】！　と流は心の中で喜んだ。
「ほほー、猫がお好き！　それは結構！　この島は猫がいっぱいいるッスからねー、おすすめス……」
　【スポット】と言いかけたので、やべー……と冷や汗をかきながら言い直す。
「じゃなかった、おすすめな猫が集まる場所とかもあるッスから、皆にも聞いてみるといいッス！」

　話し込んでいるうちに、各々が頼んだ料理が運ばれてきた。
「あ、俺の頼んだ料理がきたみたいッスね、先いただきゃす！」
　最初に運ばれてきたのは流が頼んだものだった。
「ナガレサン、ソレはナンデスカー？」
「ん？　この料理ッスか？　これは……」
　日本語で大丈夫だよな、と流は「これは鍋焼きうどんだ」と教えた。
　鍋焼きうどんは大丈夫だったが、問題は盛り付けられている天ぷらだ。
（これって日本料理だが【テンプラ】でも外国人に通用するんだよな……これは【アウト】か？）
　悩んだ末、こう説明した。
「土鍋って鍋にうどん、油で揚げたエビ、卵とかを盛り付けられた料理だ」
「ウドンが入っているんデスネー。トッ……」
「具だ、具！！」
　【トッピング】と言おうとしたので慌てて止めた。
　鍋焼きうどんに興味を示したナンシーだったが、食べたかった寝子島丼が運ばれるとそっちに集中。
「待ってマシター」
　イタダキマスと手を合わせ、割り箸を割ってさっそく一口。
「ネコジマ丼、おいしいデース！　デリ……」
「待てーい！！」
　【デリシャス】と言いそうなのを流が慌てて止めた。
「寝子島丼、美味しいデス♪」
　トワ・E・ライトフェロゥも食べたい、と寝子島丼を頼んだ。
　それにしてくれてありがとう、お嬢、と夜海霧楓は安心した。
　楓が頼んだのは月見そば。これが一番、日本語で説明しやすい安全な【メニュー】と思ったからだ。
　英二が頼んだのは親子丼。
「エイジサン、ソレも丼デスカー？」
「鶏肉と卵を使った親子丼っていう丼だよ。今度、日本に来た時に食べてみて。美味しいよ」
　
　安心した流は、鍋焼きうどんを食べ始めた。
「ナガレサン、おいしいデスか？」
「ああ、美味い」
　それ以上、何も言わず。というか、言えず。
「ナンシーさん、食べ終わったら皆でお土産屋に行かない？」
「オミヤゲヤでショ……」
「買い物ね」
　英二もナンシーが英語を口にするのを阻止。
「カイモノ、楽しみデース！」
　2人が話し込んでいるうちに、流は鍋焼きうどんを一気に食べた。

　食事が済んだ後、皆で猫待荘【ラウンジ】近くにある土産屋へ。
「イロイロなモノがありマスネー」
　置物や菓子等を見ながら、ナンシーは目を輝かせて家族の土産は何にしようか考える。
　土産屋に英語、和製英語なものはない……はず。
　トワ以外の面々は、それだけが心配だった。
　いつ英語が口にするかわからないという不安もあったが、ナンシーは土産屋では英語を口にしなかった。
　命拾いした……とトワを除く面々は思ったが、いつ口にするのかわからないので油断できない。

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