絶対に英語をしゃべってはいけない密室ホテル｜リアクション

絶対に英語をしゃべってはいけない密室ホテル

●猫待荘の不可解事件

「どういう状況なの、これ……」
　青山絢は神魂の影響からか、なぜか猫待荘にいた。
　迷い込んで早々、外が猛吹雪で帰れない状態になっているので止むまで留まるしかないと思った。
　【ラウンジ】にいた水守流から、英語を口にすると誰かが死んでしまうという異常事態が発生したことを聞いた。
「誰かが英語を口にすると、誰かが死んでしまう……？　なぜなの？」
　既に6人が死んでいるので、ここが異常な状況下であることは理解できた。
「俺にもわからんが、それで美和ちゃん先生と海原先輩が死んだのは確かだ」
　死んだ久保田美和先生と海原茂を見ながら、流はそう言った。
　いつ、誰がどんな目に遭うかわからんと身震いする流は【ラウンジ】の【ソファ】に座って寛いでいる不安要素な2人を見る。
　ひとりは海外から寝子島を訪れた、ごく普通の観光客ナンシー・ジャービス。
　もうひとりは、星ヶ丘に住める位くらいのご令嬢、トワ・E・ライトフェロゥ。
（英語を言ってはいけない空間にカタコト日本語のナンシーとトワ……。うん、こりゃ死んだな！）
　外国人であるナンシーはともかく、トワはうっかりで済まないほどに英語を喋りそうだ。

「確か、適度に散歩していたはずなんだけど、何故かこんなデンジャ……危険地帯なホテ……宿屋に紛れ込んでたよ」
　絢同様、理由はわからないが何故か猫待荘にいた佐藤英二は流の話を聞き、自分が置かれている状況を把握した。
　猫待荘に集まっている面々を見て、自分同様、迷い込んだのだろうと思った。
「また神魂の影響かな？　酷い状況だなぁ……。でも何とか生き残らないと」
　英語を話さず、話させずで皆と協力して生き残りを目指そう。
　そうと決めたら、思わず発音してしまいそうな英語は、置き換えの言葉を意識しておこうと決めた。
（【ピンチ】は窮地、【セーフ】は安全確保、【モーニング】は朝、【タイムオーバー】は制限時間到来。こんな感じで気をつけておこう）
　頭の中で考えを巡らせながら、英二は口にしないよう気を付ける。
　誰かがうっかり喋ってしまうかもしれないので、注意して他の皆を見る。

「オモシロいコトになりマシター♪」
　爆弾を抱えている存在のナンシーは、猫待荘での状況を理解していないようだ。
（頼むから英語を話さないでくれ、ナンシー……）
　流は、心の中でナンシーが英語を口にしないことを祈る。
「ここでの出来事は既に問題点も解決策も既に提示されてるんで、これ以上、どうこうしようとしても意味は薄いな」
　そのうえで、歩く爆弾お嬢様なトワをどうしようか考えた夜海霧楓だったが、結論から言えば、足掻いても無駄だという考えに至っている。
　トワを喋らせないということのほうが難しいし、正直、自爆する確率のほうが高い。
　さすがに目の前で英語を喋ることは阻止するが、既に匙は投げている。
　護衛対象であるトワの生存を目指したら被害が拡大しそうなのでは解決を早々に諦め、楓は誰かに英語を喋らせないことを託すことにした。
「エイゴを喋らない！　ダイジョーブデス！　オオブネ……【Ferry class】にノルつもりでいるのデス！」
　トワがそう言った途端、【フロント】にいた従業員が突然倒れた。
　
※従業員：死亡

　さっそくやらかしたか……と、楓はこめかみに手を添えた。
　流を除く面々は、実際に誰かが死ぬのを見て、こんなことが続くのかと思うと怖くなった。　

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