【スキー＆スノボ合宿】雪山の宝探し＆温泉もあるよ♪｜リアクション

【スキー＆スノボ合宿】雪山の宝探し＆温泉もあるよ♪

★２日目　社会人の休日＆宝探し
　
「スキーに温泉と久々の旅行だぜ」
　鳳翔皐月は、朝から晴天のゲレンデで滑っていた。
「スキーは高校生の時以来になるけどまあなんとかなんだろ」
　皐月は、シーサイドタウンの一角にミニシアター兼自宅の『Lumière』を営業している。
　資産家の親がいるおかげだが、趣味丸出しの懐かしい映画や、一部で熱狂的人気を誇る映画、リクエストされた映画を垂れ流す日々を送っている。
「さすがにボーゲンとかカニ歩きとか、起き上がりは出来るな……」
　久しぶりなので、無理はしないで思い出すようにとりあえず初心者向けから順々に試している。
　運動は得意な方ではなかったが、身体は覚えているらしい。
　それはいいのだが。
「しっかし楽しいが運動量がやべえ、体力不足を痛感するぜ……」
　しかも周囲を見れば元気な若者ばかりで、２０代の皐月でも年齢を痛感させられる。
（高校生か？　スキー合宿かもな）
　一日中滑るよりは、切り上げてすいている温泉に入るほうがよさそうだ。
　そんなことを思っていると、「寝子高生で貸し切りみたいだね」とすれ違った若者から会話が聞こえて、皐月は目を丸くした。
（おいおいマジかよ？）
　皐月は寝子高芸術科のOGなのだ。

「今日はどこから滑ろうかなー」
　そう思いながらあちこち見回していた碧南は、スキー場内に建てられた看板に猫の顔が書かれた紙が貼ってあるのを見つけた。
『チャンスは今日一日。探してくださいニャ。太陽の光できらきら輝く細氷、その宝石の在りかは箱の裏』
「宝探し……？　残り物に福がある、というし」
　せっかくだから探してみようか、と思う。
「でも箱って何？　これだけで探すの？」
　氷と書いてあるのに、宝石だと言うし。
（どっちなの？）
　首をひねりながら、そのへんに箱はないかとあたりを見回す。
　すると、ロッジの前のごみ箱に紙が貼ってあった。
「ヒント？」
　期待して近づいてみた碧南だが、書いてある文字を見てがっくりした。
『ダスト　ボックス』
「そのままじゃない！　ヒントじゃないの？　……あ、もしかしたら？」
　これも箱には違いない。
（太陽の光できらきら輝く細氷……ダイアモンドダスト？）
　ゴミ箱の裏に回ってみると、果たして宝マークのシールが貼られたビニール袋が貼ってあった。
「あった！」
　中には透明な石がついたブレスレットが入っていた。
「ダイアモンド……じゃないよね」
　それでもありがたくもらっておくことにした。

　昨日スノボの講習を受けた桜は、今日はスキーに挑戦していた。
「うん、やっぱりスキーのほうが楽ね」
　講習を受けてカンを取り戻した桜。
　腕前は初級と中級の間ぐらいなので、余裕で滑っている。
　何度かゲレンデを往復しながら思いつく。
（また宝探しに参加しようかな）
　そう思って周囲を気をつけて見まわすと、樹のうろの中にプラスチックの球を見つけた。
「今度は『龍を紙とハサミと石を使い打ち破れ』？」
　さっぱりわからない。
　首をひねっていると、インストラクターの先生が滑ってきた。
（上級コースの先生……名前、なんていったっけ？）
　桜の視線を感じたのか、彼はこちらへ近づいてきた。
「こんにちは。何か困ってることある？」
　笑顔で話しかけてくれた名札を見ると、好井龍臣（すきいたつじん）とあった。
（すごい名前……あれ？　龍？）
　勘違いだったら恥ずかしいかな、と思いつつ。
「えーと、じゃんけんしてもらってもいいですか」
　ダメもとで龍臣氏に聞いてみると、快諾してくれた。
「最初はグー、じゃんけん、ぽん！」
　桜はパーを出し、先生は……グーだった。
「勝った！」
「すごいな。僕強い方なのに。おめでとう、君は宝を見つけた！」
　龍臣はポケットからビニール袋に入ったものを取り出し、桜に手渡した。
　それは猫のキャラクターがついたご当地キーホルダーだった。
「可愛い」
　店に並んでいたら買ったかどうか怪しいけれど。
　自分で考えて探して手に入れたと思うと、なんだか貴重なものに思えた。