FINYALFANTASY7 RE Ep.3 「骨太の種族」｜リアクション

FINYALFANTASY7 RE Ep.3 「骨太の種族」

【社長室にて】

　ユズハはフジコを伴い、社長室に足を踏み入れていた。
　道中、何でも屋達が派手に暴れてくれていたため、行く手を遮られることはなく順調だった。
　もちろん猫も一緒である。
　猫達はニャーニャーと鳴き、社長室は（入ったことはないけれど）いつになく賑やかだ。
「あら、こんなところに金庫があるわ」
「え……？」
　フジコの指さす先に視線を動かすユズハ。
　そこにあったのは、ダイヤル式の、厳重なのかそうでないのかよくわからない金庫だった。
（3桁のダイヤル式か。開けられるかな……）
　デジタルの宝箱の鍵開けには自信があったが、反対にこういったアナログの金庫を破った経験はユズハにはなかった。
「番号はきっと222（ニャンニャンニャン）よ」
「え？」
　フジコの声が響いた。言うが早いか、勝手にフジコは金庫のダイヤルをまわしている。
「まさか、仮にも金庫のダイヤルをそんな単純な番号にしているはずが……」
「開いたわ」
「え……」
　ガチャリと金庫の開く音に絶句するユズハ。
「うふ。当て推量も言ってみるものね。あいつ、猫ちゃん好きだから」
　言いながら、フジコが部屋のパトロールを終えて戻ってきた猫達を抱き上げる。
　その表情には、リッカルドに対する、いくばくかの親しみが感じられなくもなかった。
「ほら、開けてごらんなさい」
「あ、う、うん」
　ユズハは、ハッと我に返ると、慌てて金庫の扉を開く。
「……あった」
　思わず声が震えた。
　ほとんど反射的に手を伸ばして、もう誰にも奪わせまいと胸の前で手の中に大事に包み込む。
　ユズハが手に包み込んだその「お宝」は何の変哲もない小さな指輪だった。
　特別に希少な宝石がついているわけでもなく、台座の金属もごく普通の素材の、本当にありふれた指輪だ。
　だが、それはユズハが初めてворと一緒に勝ち取った、大事な思い出の詰まった戦利品だった。
「大切なものなのね」
「……うん。見つかってよかった」
　フジコの言葉に、ユズハは静かに頷くとお宝を「だいじなもの」としてしまい込んだ。
「さて、それであなたはこのあとどうするの？」
「え……？」
　不意に真剣な表情でフジコに問われ、ユズハは目を瞬かせる。
「あなた、本当は『何でも屋』じゃないんでしょ？　あなたの本当の目的は私じゃなくて、その指輪。違う？」
「……気づいていたんだね」
　ユズハは隠すことなく答えた。
「まあね。それで、どうするの？　私を置いて、お宝を持って先に帰るというなら、止めないわ。」
　あなたを見ていれば、それが本当に大切なものだということがわかるからとフジコは言った。
「幸い、ここまで送って貰えたら、あとは一人でも屋上まで行けそうだしね」
　フジコはにゃーと鳴く猫に目を細めながら、静かな口調で言った。
（……そうだね。お宝を持って帰ることを優先するなら、そうすべきなのかもしれない）
　ユズハは少しだけ考え込むふりをしてから、フジコに自身の選択を伝えた。