FINYALFANTASY7 RE Ep.3 「骨太の種族」｜リアクション

FINYALFANTASY7 RE Ep.3 「骨太の種族」

【猫とゲルと虹色と】

　カーサはニャークスオフィスのデスクに腰掛けながら、侵入者を告げるアラートの音を聞いた。
「何でも屋さん達、頑張って……！」
　何でも屋は、立場は違えど、今のカーサにとっては同じ目的を掲げる同志である。
　もちろんカーサも、ただ応援をしているだけではない。
　今、この瞬間も、彼女はニャークスのパソコンを使って何でも屋達に可能な限りの支援を行っていた。
　ひとつは、1～2Fのエレベーターからリッカルドの居城である社長室や、脱出経路になるであろう屋上ヘリポートへのロックの解除。
　ひとつは、無尽蔵に送られてくるだろう増援の足止め。
　それはどちらも一筋縄にいかない作業であったが、カーサは所持していた「みやぶる」マテリニャの副次的な効果によって、可能な限りその作業時間の短縮に勤めていた。
　そして、もうひとつ――
「そもそも社長はどうしてフジコさんをあそこまで狙うの？」
　それがカーサにとっては大きな気がかりであった。
　そこに、何か、とても大きな秘密が隠されている気がした。
「……神猫極秘プロジェクト。これかな。あ、パスワードがかかってる。あやしい……」
　何でも屋の支援と並行して、カーサはパスワードの解除を試みる。
「……よし、解除成功。それで、中身は、と……」
　カーサは中身を読み始める。
　そこには、リッカルドが社運を賭けたプロジェクトに挑むため、北の大地からある古代生物の細胞を入手し、神猫ビル地下でその培養に成功したとの記述があった。
「え、これって……」
　カーサが目を見開いた、そのときだった。
『ウホ！　こんなところに忍びこむなんて、イケない子ね』　
「……っ！？」
　不意に後ろから聞こえた声に、カーサは椅子から飛びあがりそうなほどに驚きながら後ろを振り返った。
　そこにいたのは、ニャークスのオフィスを謎の汁まみれにしながらイケメンを求めて徘徊していたゲル状の生き物――ナイスゲイ（ミッシェル・ナイスゲイ）だった。
（……こ、これが、ここに書かれている古代生物――から培養された細胞……なの？）
　そう問いただしたくなるも、あまりに強烈なビジュアルに言葉を失ってしまう。
『ウホ！　こんなことをしている場合じゃなかったわん♪　感じる、イケメンが約束の地に集う予感を感じるわん♪』
　結局、ミッシェルはカーサには何の危害も加えず、くねくねとフジコと似た動きをしながらオフィスを出ていった。
「た、助かった……の……？」
　しかし、ほっとしたの束の間、ふと気づくとミッシェルの移動した後に残ったゲル状の残滓がうねうねと一点に集まりだし、カーサもよく知る人物の姿になった。
「え……？　プ、プレジデント……！？」
　それは神猫の社長リッカルドにうりふたつの姿をしていた。なぜか釘バットを持っていたが。
『そう。私は私は神猫カンパニーの社長――リッカルド・ニャカザワ、のコピーだ。悪いけど、秘密を知ったからには死んでもらうよ』
　そう言って、リッカルドコピーがバットを振り被る。
「――悪いけど、そうは問屋が卸さないよ、と」
『アーーーーッ！？』
　いつのまにかコピーの背後に立っていた謎の虹色の仮面を被った男が、電磁警棒をコピーの尻に叩き込んだ。
「危ないところだったね、と。だが、おてんとさまの光とこのレインボー仮面がある限り、悪の栄えた試しなし、と」
「レ、レインボー仮面……？」
　長年、ミッドニャルとその下のスラムで生きてきたカーサだったが、そんな生き物の名前は聞いたことがなかった。というか、喋り方と声がどう考えてもニャークスのあの人だった。
「さあ、コピーと何でも屋くん達の援護は僕が引き受けた。君は君のやるべきことをやりたまえ」
「あ、は、はい……。ありがとうございます、シュ……じゃなくて、レインボー仮面さん」
　変装はバレバレだったが、カーサは変装をする上司の気持ちを汲み、気づかないふりをしてあげるのだった。