FINYALFANTASY7 RE Ep.3 「骨太の種族」｜リアクション

FINYALFANTASY7 RE Ep.3 「骨太の種族」

【遥かにゃる戦い、開幕潜入編（一）】

　カーサ・エミニアル（恵御納夏朝）は、その夜は非番であったが、あえて神猫本社に出社した。
（神猫変える為に頑張ったけど、もう我慢の限界……。何が何でもフジコさん達を助ける！）
　先日のヘリの一件、どう「ひいき目」に見てもやりすぎだった。
　同じことを考えた人がいたのか、先日、カーサのアドレスにニャークスのオフィスに入り込むパスワードが送られてきた。
（罠かもしれないけど、このチャンスはいかさないと……）
　見張りのいる裏口の社員通用門を何気ない顔をして社員証で通り、カーサはニャークスのオフィスに向かう。
　日頃、真面目な働きぶりで知られるカーサの謀反を疑う者は、その見張りの中にはいなかった。

　　＊　＊　＊

　そんなカーサの様子を物陰から見つめる者がいた。
（へえ。あの娘、神猫の社員さんだったんだね）
　ユズハ・イズミ（稲積柚春）は厳重に閉ざされた扉の向こうに消えていくカーサの背中を見送りながら、少し興味深げに呟いた。
（ニャルネオの屋敷のことと言い、今回のことといい、バレたらタダじゃ済まないよね）
　ユズハは会社員ではなかったが、企業において上司の、まして社を代表する取締役に逆らうことが何を意味するかぐらいはわかっていた。
（……そうまでしてでも為し遂げたいことがあるんだね。私と――いいえ、私達と同じだね、вор）
　ユズハは、相棒の小さな人形『вор』に、そう語りかける。
　彼女の悲願は、ворと最初に見つけた「お宝」を奪い返すこと。
　ほんの少しの手違いで神猫の社長――リッカルドの手に渡ってしまったその「お宝」を奪い返すためなら、ユズハはどんな非道も辞さぬ覚悟があった。
（さて、まずは鍵を手に入れないとだね）
　言うが早いか、ユズハはворに「あやつる」を使っている。東方の国「ウーニャイ」の出身である彼女の一族だけが持つ特殊なアビリティだ。
　小さな盗賊人形のворは見張りの兵士から、手当たり次第にポケットを探っていく。
　だが、神猫の兵士はいずれもピリピリと張りつめた空気で見張りを続けていた。
　気づかれずに鍵を奪うのは、少しばかり骨が折れる作業になりそうだった。

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