ファンタジーDay★｜リアクション

ファンタジーDay★

　～シーサイドタウン駅前～

　既に日は沈み、空に星が瞬く頃。
　ドガァアアアアンン～～～～～～～～～！
「ふぎゃ！　けほっ、こほっ！　……んがぐぐ！」
　はぐはぐささみ肉が付いた串焼きを食べていた圭花。
　斗南に炎を出させて焼いた物だ。
　彼女曰く、
「私のが動き回ってお腹空くんにゃから」
　とのことだった。

　背後で起こった爆発に、喉を詰まらせる圭花。
「おい、桃川大丈夫かよ……ったく」
　トントンと背中を叩く斗南。
「けふっ、けふっ……ゼーハー……ありがと、灯君……いったい何事にゃ？」
　顔を見合わせる二人。
　煤けた顔が激戦を物語っていたが幸い、擦り傷程度で済んだようだ。
「突入した連中がボスを倒したんじゃ無いのかな……」

　改めて外から駅を眺める。
　最上階の外壁が吹き飛んで、窓ガラスが全部割れていた。
「おいおい……連中無事なのかよ……ん、なんだあれ……」
　もうもうと立ちこめる粉塵の中から、小さくて素早い物体が数体飛び出してきた。
　中には宝石を頭に乗せたスライムがいる。
「なんだあれ……灰色の……スライム？」
「……頭に何か付いてるにゃ……ねえ、アレって……ボスじゃにゃいの？」
　串の先で指し示す圭花。
　爆発の衝撃で分裂したボス。力と引き替えに素早さを手に入れたらしい。
「馬鹿な……く、素早い！」
　駅前広場を抜け、市街地へと逃げるスライム。
「行かせん！　…………くっ、無理か……」
　手の平を向けて炎を出そうするが、ポッとちいさな種火程度しか出ない。

「任せるでござる……」
　零が弓を構える。つがえる矢は先端に爆発するスライムを付けた、特別製の物だ。
　ギリギリギリ……
　弓弦を引き絞り、狙いを定める。
　スライムの進路を予測して、偏差攻撃をしかける。―もう少し……あと少し…………今！―
　限界まで引いた弦をそっと離す。
　ビィン！
　大気を引き裂き、矢が一直線に飛んでいく。
　宝石を頭に乗せたスライムに吸い込まれるように、矢が刺さる寸前……一匹のスライムが庇うように飛び出す。
　ザシュ！
　ボフゥウウン！！
　体内に深く突き刺さり、破裂する。
　爆風で吹き飛ぶ宝石スライム。
　一瞬ふらつくも、そのまま郊外に向かって疾走して行った。

「……しくじったでござる……敵ながら見事な覚悟……」
　俯く零。むき出しの華奢な肩が小さく震えていた。
「ま、まあしょうがないさ。俺達だってやるだけやったんだ……」
　励ます斗南をちゃかす圭花。
「にゃはは、灯君、柄にもないにゃー」
　つんつんと串で斗南をつっつく圭花。
「ったく……零、他のグループに連絡だ。奴らにも活躍して貰わないとな！」
「分かったでござる……」
　零が先端にスライム付きの矢をつがえる。
　ギリギリギリ……
　ビシュゥ！
　ギリギリギリ……
　ビシュゥ！
　連続して２本。
　解き放たれた矢は、藍色に染まった空に、光の軌跡を描く。
　一本はスライムの逃走を知らせ、もう一本はルートを知らせる物だった。
！